「うおおおおーっ! 聞いたぞジョシュア!
 ついに婚約者を見つけたんだな!?」

 背が高く、いかにも高貴な気配に満ちた男性。
 艶のある黒髪が特徴的だ。

「……ジャック。忙しないな」
「!?」

 ジャック。
 その名を聞いた瞬間、マイアの思考がフリーズした。

 そうだ、自分はこの人を知っている。
 ジャック・ハドルストン。
 この国の第二王子である。

「そちらの方が婚約者かい? 初めまして、ジャック・ハドルストンだ。一応第二王子だよ。よろしく!」
「よ、よ、よよよろしくお願いします! マイア・ハベリアと申します!」

 マイアの様子を見てジョシュアは愉快そうに笑みを漏らした。
 まあ、こうなるだろうと。

「マイアは緊張しやすいんだ。あまり脅かすようなことを言うなよ」
「わかってるさ。せっかくジョシュアのお眼鏡にかなう人が現れたんだからな。自分の悪評を流してまで頑なに結婚しなかった君が、婚約者を見つけるとはね!」
「ジャックも毎日のように結婚しろとうるさかった。これでようやく静かになってくれるな?」

 二人は愉快そうに笑い合っている。
 どうやら相当仲がいいらしい。
 王族とも交友関係があるとは、さすが公爵だ。