マイアはドレスを着こみ、王国のとある屋敷に訪れた。
 隣を見上げると、よい姿勢で歩くジョシュアの姿がある。

「ぎこちないな、マイア。もう少し堂々と歩くといい」
「は、はい!」

 未だにマイアと呼ばれることに慣れていない。
 耳の端まで真っ赤になってしまう。

「あの、ジョシュア様。この屋敷で茶会をするのですよね?」
「そうだ。まあ、今回は社交というよりも個人的な付き合いだな。古くからの友人に招かれた」

 古くからの友人。
 ジョシュアはそう語った。
 貴族の界隈には詳しくないので、家紋で血筋を判別することはできない。
 この屋敷の家紋を見ても、マイアはどの家系のものかわからなかった。

 屋敷の入り口で、使用人と思わしき者が出迎える。

「お待ちしておりました、ジョシュア様。
 ……そちらの方は?」
「俺の婚約者だ」

 直球に婚約者と言われ、マイアの鼓動が高鳴った。
 しかしここは婚約者然とした態度を。
 彼女は澄ました顔をして佇む。

「……! それはおめでとうございます!
 なんとお美しい……ささ、どうぞ中へ」

 使用人は満面の笑みを浮かべて、二人を中へ招き入れた。
 ジョシュアが頑なに結婚しようとしないことを、彼を知る人々は憂いていたのだ。

 中は予想通り、かなりの豪邸だった。
 ジョシュアの城と遜色ない豪華さだ。

 お茶会……と聞いていたものの。
 マイアとジョシュア以外、通された居間には誰もいなかった。
 ジョシュアの隣でおとなしく待っていると、なにやらドタドタと階段を駆け下りる音が聞こえてきて……