マイアはジョシュアと共に朝食を囲んでいた。
背後ではアランやセーレたち使用人が控えている。
黙々と。
ジョシュアは食事を進めていた。そんな彼にアランが何やら耳打ちする。
ジョシュアは何やらしばらく渋面していたが、おもむろに口を開く。
「マイア嬢。今日は仕事がある。家を離れなければならない」
「承知しました。ジョシュア様はお忙しいですものね。
私がお力になれることがあれば、何でもおっしゃってください」
元々、ジョシュアが仕事に集中するための契約結婚だった。
彼が仕事を遂行することが最優先だ。マイアとしても、公の場で妻として振る舞うこと以外に役割は求められていない。
それなのに、ジョシュアはどこか申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
しかし口ごもってしまい、再びの沈黙が訪れる。
「……」
「……」
マイアは男性との会話経験がほとんどない。
そしてジョシュアは無口な性格。堅物公爵と呼ばれるだけはある。
この二人が揃えば、こうして沈黙した場になるのは必然だった。
その沈黙を破ろうと、マイアは一念発起する。
「あ、あの……ジョシュア様。このお家は、とても素敵な場所ですね」
「素敵?」
「はい。使用人の皆さんは親切にしてくださいますし、料理はとてもおいしいですし、浴場は気持ちいいですし。本当にこんな場所に私がいてもいいのかと、思わず疑ってしまうほどです」
「安心するといい。ここが君の居場所だ。気に入ってもらえたなら、いつまでも居てくれて構わない」
『いつまでも』──そんな言葉に、マイアは眩暈がした。
こんな天国のような場所に、大した責任も負わず暮らしていいのだろうか。
背後ではアランやセーレたち使用人が控えている。
黙々と。
ジョシュアは食事を進めていた。そんな彼にアランが何やら耳打ちする。
ジョシュアは何やらしばらく渋面していたが、おもむろに口を開く。
「マイア嬢。今日は仕事がある。家を離れなければならない」
「承知しました。ジョシュア様はお忙しいですものね。
私がお力になれることがあれば、何でもおっしゃってください」
元々、ジョシュアが仕事に集中するための契約結婚だった。
彼が仕事を遂行することが最優先だ。マイアとしても、公の場で妻として振る舞うこと以外に役割は求められていない。
それなのに、ジョシュアはどこか申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
しかし口ごもってしまい、再びの沈黙が訪れる。
「……」
「……」
マイアは男性との会話経験がほとんどない。
そしてジョシュアは無口な性格。堅物公爵と呼ばれるだけはある。
この二人が揃えば、こうして沈黙した場になるのは必然だった。
その沈黙を破ろうと、マイアは一念発起する。
「あ、あの……ジョシュア様。このお家は、とても素敵な場所ですね」
「素敵?」
「はい。使用人の皆さんは親切にしてくださいますし、料理はとてもおいしいですし、浴場は気持ちいいですし。本当にこんな場所に私がいてもいいのかと、思わず疑ってしまうほどです」
「安心するといい。ここが君の居場所だ。気に入ってもらえたなら、いつまでも居てくれて構わない」
『いつまでも』──そんな言葉に、マイアは眩暈がした。
こんな天国のような場所に、大した責任も負わず暮らしていいのだろうか。
