「それは本当か?」
「ええ、間違いありません。僕がこの身で体験しましたから」

 アランの報告を受けたジョシュアは、眉間に皺を寄せて考え込む。

「ハベリア家について調べるに当たって、マイア嬢の能力を家族が把握しているかどうかも調べてくれ」
「もちろんです。ただ、治癒能力があることを知った上で、悪評のあるジョシュア様に嫁がせるとは考えられませんね。はたしてどの程度、治癒できるのかは不明ですが」
「俺がマイア嬢にそれとなく尋ねておこう。
 おまじないとやらを他言しないように、改めて釘を刺しておく必要があるな」

 仮にマイアの治癒能力がジョシュアの想定どおりのものであれば、これはかなり重要な案件だ。
 アラン曰く、外傷だけではなく体調を整える効力もあるという。
 そんな術は前代未聞。

 ハベリア家の見る目のなさに呆れつつも、マイアがハベリア家に悪用されなくてよかったとも思う。

「失われたはずの治癒能力……いや、まさかな……」
「……仮に『おまじない』を求めて争いが起こりそうだったら?」
「隠す。これ以上、彼女を酷い目には遭わせられん」
「承知しました」

 ジョシュアは何としてもマイアを守るつもりだ。
 今後、彼女の能力を狙って誘拐などされるかもしれない。

 より一層、傍にいる必要があるとジョシュアは思い直すのだった。