雑誌を片手にケーキ屋さんに電話してみる。

トゥル…ル、トゥル…ル、トゥル…ル
ガチャ。

「はい、ガトーショコラです。」

明るい女性の声が受話器の向こうで響いた。

「あの、求人雑誌をみて電話したんですが…まだバイトの募集はしてますでしょうか。」

「バイトの面接希望ですね。ただ今、採用担当の者と代わりますのでしばらくお待ちください。」

しばらくすると、採用担当の人が電話に出た。

「お電話代わりました。採用担当の関です。はじめまして、面接が希望ということですが、お名前と年齢を教えて頂けますか?」

優しそうな声で関さんは私にいくつかの質問をした。私は緊張しながらも質問に答えた。

「はい、わかりました。では、面接の日を決めたいのですが、来週の火曜18時からでいかがでしょうか。」

「予定はないので問題ありません。お願いします。」

「では来週の火曜18時にお店へお越しください。お待ちしております。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。失礼いたします。」

携帯を切り、ほっと一息つく。これで面接が受けられる。

私は学校の帰り道、履歴書を買い、履歴書に貼る証明写真を撮って帰った。

ふと、採用担当の関さんの声を思い出した。男性なのにとても優しい柔らかい声だった。

どんな人なんだろう。

面接の時に会えることが楽しみになっている自分がいたことに、この時の私はまだ気付いてなかった。