パチンコ屋で初めて見たときの不貞腐れた顔が思い出され、背筋が冷えた。喧嘩が始まりやしないかとひやひやしながら横目でのんちゃんを見ると、長いまつげを伏せたまま笑んでいた。

 ひとまず胸を撫でおろして、冷たいビールを喉に流し込んだ。

「家はもう決まってるの?」
「オレら一緒に住むから」
「えっ? 同棲ってこと? え、親はいいって?」
「うん。慶とのことは何も言われないから」

 けろっと言うのんちゃんに、「そ……そうなんだ」としか返せなかった。

 男きょうだいしかいない俺は、女の子がいる家がどんなものなのかよくわからない。それなりに厳しそうなイメージを持っていたが、高校卒業したてでありながら彼氏との同棲を許可するくらいならそうでもないのだろう。

 あるいは、慶がそれほど信用されているということなのかもしれない。

 確かにな、と思う。清潔な外見に加え、たまに家族の話を聞く限り育ちもよさそうだし、さらに道内トップの大学に通っているのだ。大切な娘の交際相手としては申し分ないだろう。

「どうせ毎日会うんだし、一緒に住んだ方が楽だろ」
「それは……ごちそうさま」

 聞けばすでにのんちゃんの荷物も運び終えていて、このまま慶の家に住むとのことだった。

 単なるだら飲みから急遽のんちゃんの大学合格と引っ越し祝いに変更し、夜が明けるまで、俺の家には笑い声が響いていた。