あまり年下の女の子に免疫がない俺は最初こそ戸惑っていたものの、のんちゃんが人懐っこいのがせめてもの救いだった。

 不意に、すげえつまんないからね、と冷淡に呟いたのんちゃんの横顔が脳裏に浮かんだ。

「のんちゃんってパチンコ……」嫌いみたいだけどと言いかけて、とっさに訂正する。「好きなの?」

「いや、まだハマってはないみたいだけど。すぐ飽きただのつまんないだのってさ。やらなきゃ楽しくなるわけねえのに、あいつ基本的に我儘なんだよ」

 のんちゃんを我儘だと思ったことは特になかった。むしろ従順に見える。

 とはいえ俺が否定するのはお門違いなので、そっか、とだけ答えた。それにのんちゃんが無理に連れていかれているわけじゃない。本当に嫌なら行かなければいいだけの話なのだ。

 のんちゃんものんちゃんで、なんだかんだ慶と一緒にいたいのだろう。

「まあこうやって毎日連れて行けばそのうちハマるだろ」

「え? なんで?」

「あれだけ引き強いんだから、だんだん楽しくなるだろ? そもそも、付き合ってんだからオレの趣味に興味持つのは当然だし」

 後半は正直あまりよくわからない理屈だったが、「なるほど」と返しておいた。

 のんちゃんを少し気の毒に思いつつも、俺としては慶の新たな一面を知り新鮮な心地でもあった。

 慶とは丸二年の付き合いになるが、基本的に落ち着いている奴だ。物静かというほどではなくとも、例えば飲み会のとき輪の中心ではしゃぐよりも端から眺めているタイプ。無論怒ったところも見たことがなかった。

 俺や由井もはしゃいだり感情を表に出したりする方ではないので、なんとなく馬が合ったというのもこうしてつるんでいる理由の一つかもしれない。

 そんな慶が、のんちゃんに対してはまるで子供のように感情をあらわにするのだ。最初こそ慶の意外な一面を見て驚いてしまったが、彼女だからこそ気兼ねなく接したり軽口を叩いたりできるのだろう。

〝彼女〟という存在にそこまで気を許せる慶が、俺は少しだけ羨ましい。

 ──モトは結局、あたしのことなんか好きじゃないんだよ。