運命の悪戯。

 馬鹿げた表現だけれど、他にこのふざけた現象の呼び方を私は知らない。

 慎ちゃんに別れを告げられてからも、ずっとわからなかった。どうしても納得できなかった。理由を訊いても答えてくれない。ただ、別れようと何度も私に言った。

 終わらせようとしているのは慎ちゃんなのに、なぜかとても──私よりもずっと辛そうだった。

 別れなければいけない理由なんて、私には到底思いつかなかった。だって私たちは、別れを切り出されるほんの一ヶ月前まで、幸せに満ちていたのだ。

 必死に考えた。慎ちゃんの様子がおかしくなった時期を。きっかけを。

 考えて考えて、やっとたどり着いたのは、初めて慎ちゃんとお母さんが対面した日のことだった。

 思い返してみれば、慎ちゃんの様子がおかしくなったのはその直後からだった。

 ──じん……ぐう、じ?

 あの時は気付かなかったけれど、今思えばお母さんの反応も不自然だった。確かにちょっと豪華でちょっと珍しい名字ではあるものの、お母さんがあそこまで驚くはずがない。

 のちに紹介された、当時のお母さんの彼氏──今のお父さんの名字は西園寺(さいおんじ)。私は名乗るのが恥ずかしいくらい、『豪華な名字』で検索したら最上部に出てきそうなくらい、派手な名字なのだから。

 お母さんは何か知っている。もしかすると、慎ちゃんのことが気に入らなくて、慎ちゃんに何か余計なことを言ったのかもしれない。

 だから、お母さんに訊いた。明らかに狼狽しながらもしらばっくれるお母さんを何度も何度も問い詰めた。

 そして、慎ちゃんと別れて三ヶ月後。ついに、お母さんは私に真実を告げた。

 予想だにしなかった、とても現実とは思えない事実を。

『──きょうだいなの』
『……は?』
『あなたたちは、血の繋がったきょうだいなの』

 お母さんが放ったたったの一言を理解するのに数分を要した。