〇道端(夜)
 家の近くを理人と散歩。せわも理人も部屋着。

 せわ「あーいすっ、あいす〜」

 鼻歌交じりに軽い足取りで歩くせわと、その後ろを無表情で歩く理人。

 理人「コンビニに行くだけではしゃぎすぎだろ。子どもか」
 せわ「人間、このくらい単純な方が幸せに生きていけると思うの」
 理人「哲学?」

 理人は、夜にちょっとコンビニに行くだけでも心配して着いて来てくれる。保護者みたいだ。



 〇コンビニの店内。アイスコーナーを眺める二人。

 せわ「あった〜! 期間限定、濃厚もっちり餅となめらかな口どけが最高なこだわりミルクの贅沢アイス!」
 理人「品名なが」



 〇公園・ブランコ(夜)
 会計を済ませたあと、二人は近くの公園に行って、ブランコに並んで座った。

 せわはカップのアイスをスプーンでひと口すくって食べ、目を輝かせる。

 せわ(濃厚もっちりなめらか〜)

 ブランコを少し漕ぐ。

 せわ「そうだ。球技大会ほんとにドッジでよかったの? サッカーの方がよかったんじゃ……」
 理人「せわが怪我してないか心配になるから。お前、目を離すとすぐ顔面からボールに突っ込んでくし。ドッジだけ他の種目と違って男女合同で結構危ないだろ?」

 せわは頭の中で、男女共に本気モードで燃え上がっているドッジボールの光景を思い浮かべ、怖くなって肩を竦める。

 理人「あとビビりだし」
 せわ「う……。だ、大丈夫だよ。このせわちゃんにかかればボールくらい余裕でかわせるよ」
 理人「フラグだな」

 遠い目をするせわ。

 理人「お前は怪我しないように後ろの方でちょろちょろ動いてな。目立たないようにさ」
 せわ「うん、そうする。理人も気をつけてね? 存在が目立つから狙われるよ」
 理人「存在が目立つ」
 せわ「うん」

 アイスをひとくち分すくい、はぁとため息を漏らす。

 せわ「球技大会、早く終わんないかなぁ」
 理人「気が早いな。まだ二週間も先だろ?」

 理人が立ち上がり、せわが持つスプーンからアイスを食べた。

 せわ「……!」
 理人「ならさ。球技大会終わったらご褒美にまたアイス買いに来よ」

 顔を覗き込んだまま、わずかに口角を持ち上げる理人。綺麗な目と視線がかち合い、どきっとするせわ。

 せわ「……う、うん、それを楽しみに……がんばる」
 理人「偉い」

 せわはなぜか顔が熱くなる。

 せわ(これって――間接キス……。あれ? なんで私、理人相手にどきどきして……)