四月のきみが笑うから。


「それはきっと瑠胡が自分に期待しすぎてるんだと思うよ。期待すればするほど自分としての理想像が高くなって苦しくなる。必要以上の力を求めてしまうから」


 諭すような口調に、思わず口を噤む。頭を鈍器で殴られたような感覚だった。


(期待しすぎてる、だなんて)


 なぜだか自分を否定されたような気がして、悲しみとともに憤りを感じた。

 誰かに傷つけられても、悲しいとは思ってもそれが怒りに変わることはなかった。けれど今は、自分の思いが"怒り"というたしかな感情に変化していくのを心中で感じる。


 いつもわたしの心を理解して、寄り添ってくれた先輩に、そんなふうに言われてしまった。唯一の存在に非難されたような気がして、それがたまらなく悲しくて、苦しくて、悔しかったのだ。


(どうしてわかってくれないんだろう)


 今までは理解されないことが当たり前だったのに。

 以前のわたしからすればおこがましく感じてしまうようなことを、わたしは平然と思っているのだ。


 ぎゅっと拳を握りしめて、同じように先輩の瞳をまっすぐ射抜いた。