四月のきみが笑うから。


「元気ないのは、なんで?」


 ここ数日、先輩に会えなかったからですよ、なんて。

 そんなこと恥ずかしくて言えるはずがない。


 ぶんぶんと首を横に振る。


「せ、先輩は最近なにしてたんですか」


 妙に早口になってしまう。

 質問に質問で返してしまったのに、先輩は気分を害した素振りもなく、柔らかく笑っていた。それからじっとわたしを見つめたあと、ゆっくりと息を吐いて目を伏せる。


「図書館で勉強してた。あとは学校に残って講習会の日もあったな」

「あ……なるほど」

「寂しい気持ちにさせて悪かったな」

「……別に、大丈夫です」


 つい、言葉が出てしまう。

 本当は何も、大丈夫なんかじゃないのに。


 ふっ、と口許を緩ませた先輩は「素直じゃねーの」なんて言って笑っていた。

 すべてバレている。わたしが今日まで元気がなかった理由も、先輩の返答からしてバレてしまったようなものだろう。


 先輩が小さく息をついて、前を向いたまま口を開く。