四月のきみが笑うから。


 歩くたび先輩の髪が揺れるのを見ながら、歩くこと十数分。


「ついた」

「わあ……っ」


 そこには、真っ青な海が広がっていた。

 その美しさに思わず感嘆の声が洩れるけれど、それと同時に何か引っかかりを覚える。


 モヤモヤとしていて、うまく言葉に表せないけれど、何かを忘れているような、そんな不思議な感覚だった。


「どうした?」

「……いえ、なんでも」


 不思議そうにわたしを覗き込む先輩。

 どうせならもっとしっかりリアクションしたかった。違和感に流されてしまう前に、感動を伝えたかったのに。


 やるせない気持ちになっていると、眉を寄せた先輩がわたしの顔をのぞき込んだ。


「なんでちょっと残念そうなんだよ」

「ち、違います」


 なんでもお見通しの先輩は、またわたしの額を弾いた。

 これでは、落ち込んでいる理由までバレていそうだ。