「こんなこと初対面で訊くのはおかしいかもしれないけど……瑠胡ちゃんってHSPだったりする?」
充血した目を向けると、「なんとなく、私と同じような気がして」と告げられる。
「……HSPって、なに?」
「うーん。簡単に言うと、繊細な人のこと、かな。今はネットでもいろんな情報が出てるし、診断もできるみたいだからやってみたらいいかも。もちろんそれが全てではないけど、たぶん瑠胡ちゃんは私と一緒な気がする。まあこれは私の勘だから、あんまり気にしないで」
ふふっと笑う古園さんからは、敵意をまったく感じなかった。
(敵意、だなんて)
わたしはいつからか、周りの人間はすべて敵なのだと思うようになっていた。
話すより先に距離をとる。
疎ましく思われないために、邪魔だと思われないために。
ささいな表情の変化で、その人の気持ちというものは案外伝わるものだ。
それらを敏感に感じとってしまうから、いつしか人に怯えるようになってしまった。
「生きづらさを感じる人が全員HSPだって決めつけはよくないってことは知ってるの。だけど、知識として知っているか知っていないかだと、きっと前者のほうがいいと思うの。誰だって安心するでしょ。自分を否定する回数が減るのなら、わたしは調べてみるのもありだと思うな」
「……」
「もし瑠胡ちゃんが周りとうまくいかなくて、苦しむことがあったらね」
ふうっと息を吐き出した古園さんは、わたしと視線を合わせて微笑んだ。



