四月のきみが笑うから。

 聞いてほしいのに、口から出るのはこれまで幾度となく口にしてきたテンプレート。

 意識よりも先に口からこぼれてしまうその言葉は、今までのわたしを助け、そして何よりも苦しめたものだった。


 それは、今も。


 首を横に振った先輩は、わたしの頭に手をのせた。ポン、ポンという二度の後、わたしの目を覗き込む。


「瑠胡はいま大丈夫じゃない。だから嘘つくな、ありのままでいい」


 言い聞かせるようなその口調に、固く閉ざされていた心が開かれていく。
 自分の気持ちが、素直な思いが繋がって、言葉として口から出ていく。


「人の悪口を聞いていると、自分が言われてるみたいになるんです。苦しくて、つらくて。人のこと悪く言ったところでメリットなんてないはずなのに。もう、一緒にいたくない……」


 彼女たちと離れてしまいたい。

 だけど、そんなことできるはずがない。
 すべて今更なのだ。