もしかするとこの人は、自分が言ってほしい言葉を、わたしにくれていたのかもしれない。
同じように気持ちがわかるからこそ、わたしがいちばん求めていた言葉を、そっと手渡してくれたのかもしれない。
「医者になりたい理由も、存在理由も、わたしのことを先輩が助けてくれた理由も、そばにいてくれた理由も、わたしが先輩を好きな理由も、きっと必要ないと思います。ただ、そうなる運命だっただけ」
運命、という言葉に、自分自身の体温が上昇していく気がした。
けれど、ありのままの気持ちを伝えたくて、口が動くままに声を出す。
「それで片付けたら、ダメなんですか?」
「……」
「それに先輩は、ちゃんとわたしのことを救ってくれました。先輩のおかげで、確実にわたしの命は助かったんです。人の命を助ける理由なんて、なんでもいいと思います。ただ、医者になりたいってだけで、仕事を全うして、救える命を救うことができれば、それでいいと思います」
すうっと息を吸う。
この先を続けるのはすごく怖いけれど、素直な気持ちをぶつけてしまおうと思った。
これが最後になってしまうかもしれないから、後悔はしないように。
「この先、先輩が不安なら、今度はわたしが先輩を笑顔にできるように頑張ります。どんな選択をした先輩のことも、となりで支えていきたいです。だから……その」
「悪い」
口を開閉している間に告げられて、喉まで出かかった声を呑み込む。
覚悟はしていたけれどはっきりと言葉にされると思っていた以上につらくて、涙が出そうになるのを必死に堪えた。



