四月のきみが笑うから。


「瑠胡に弱さを見せたくなくて、怖くなって、逃げた。俺がいなくても瑠胡はもう十分立派に生きていける。そう思ったら、もう俺がそばにいる理由なんてないんじゃないかって」


 先輩も、先輩のお兄さんも、弱さをみせるのが下手くそだ。

 糸がちぎれてしまうギリギリまで我慢して、ほぼちぎれた頃に吐き出すのだから。


『そろそろアイツ、壊れるだろうから。どうか守ってやってほしい。こんなこと、瑠胡ちゃんにしか頼めないんだ』


 僕にはそれすらもできないから────。


 珀都くんの言葉がフラッシュバックする。


 彼の目が、わたしにそう訴えているような気がした。

 笑ったとき、目尻にしわがよるところ。口の右端がちょっとだけ上がるところ。

 微笑んだときの表情と仕草が、思えばいつも重なっていた。


 そしていちばん似ているところは、互いが互いを好きなところ。


「人の命助けたいとか、憧れだとか、そんな理由じゃないから幻滅しただろ」


 自嘲する先輩は、わたしの手をそっと離した。まるで自分とは別物だと、そう言われたような気がした。


「いいんじゃないですか、理由なんて」


 気づいたら口からこぼれていた。

 わたしの言葉に顔をあげた先輩は、何かを期待するような瞳でこちらを見つめる。