「だけど……珀都が自殺する日、一緒にここに来て。それで、同じようにここに立って、アイツは俺の目の前で、この海に飛び込んだ」
「……っ」
「死にたい、もう苦しい、って、俺に泣きながら言うんだよ。ついには『お願いだから死なせてくれ』って。まだ……まだ十歳だったのに」
「……っ、せんぱい」
思わず近寄って、震える身体を抱きしめた。
びくりと跳ねたのち、ゆるりと緩くなる。
どんなにつらかったことだろう。
珀都くんも、先輩も。
聞いているわたしですら、つらくて泣いてしまいそうなのに。
「俺、それ言われて何もできなくて。もう生きたくないって言ってるやつに生きろって言うのは、ものすごく残酷なことなんじゃないかって。ここから消えるっていう手段すら奪っておいて、この世界での幸せの保証なんてしてやれないのに、そんなの無責任なんじゃないかって」
「……それで、先輩は」
「助けられなかった。突然すぎて動けなかったし……なにより俺は怖かった。飛び込むことなんてできなくて、見ていることしかできなかった」
ぐっと唇を噛んだ先輩は、まっすぐにわたしを見つめた。
充血した目は、それでもなお光を失ってはいない。
スッとわたしの心に差し込んでくる、あたたかな木漏れ日のような光。



