四月のきみが笑うから。


「だけど……珀都が自殺する日、一緒にここに来て。それで、同じようにここに立って、アイツは俺の目の前で、この海に飛び込んだ」

「……っ」

「死にたい、もう苦しい、って、俺に泣きながら言うんだよ。ついには『お願いだから死なせてくれ』って。まだ……まだ十歳だったのに」

「……っ、せんぱい」


 思わず近寄って、震える身体を抱きしめた。

 びくりと跳ねたのち、ゆるりと緩くなる。


 どんなにつらかったことだろう。

 珀都くんも、先輩も。


 聞いているわたしですら、つらくて泣いてしまいそうなのに。


「俺、それ言われて何もできなくて。もう生きたくないって言ってるやつに生きろって言うのは、ものすごく残酷なことなんじゃないかって。ここから消えるっていう手段すら奪っておいて、この世界での幸せの保証なんてしてやれないのに、そんなの無責任なんじゃないかって」

「……それで、先輩は」

「助けられなかった。突然すぎて動けなかったし……なにより俺は怖かった。飛び込むことなんてできなくて、見ていることしかできなかった」


 ぐっと唇を噛んだ先輩は、まっすぐにわたしを見つめた。

 充血した目は、それでもなお光を失ってはいない。


 スッとわたしの心に差し込んでくる、あたたかな木漏れ日のような光。