彼はきっと、わたしが思っている以上にずっと脆くて、弱い人だ。
だけどその脆さも弱さも、ずっとずっと抑え込んで隠して生きてきた、紛れもなく強い人。
「教えてください、先輩。話すだけでも、楽になることだってあります。わたしはそう、習いました」
しばらく口を結び、その唇を震わせていた先輩は、意を決したように向き直った。
それだけでわたしたちを取り囲む空気がガラッと変わる。
ひや、と背筋を汗が伝った。
「俺の兄貴……珀都は、この海で、死んだ。自分で飛び込んだのが、最後だった」
「それは……何歳のときですか」
「俺が八歳で、アイツが十歳のとき」
夢の中の珀都くんと同じくらい。
珀都くんの時間は、あのまま止まってしまったのだ。今までの言動を振り返ってみると、たしかに納得できる。
年齢に似合わない大人びた表情や、不思議な言葉の数々。それらは全て、珀都くんの中身だけが成長してしまったせいだろうか。



