四月のきみが笑うから。


「死んだんだ。俺が、殺した」

「……え」

「この海で、俺がアイツを殺したんだよ」


 聞き馴染みのない言葉に息が詰まる。

 ゆっくりと目線を上げて、先輩の瞳を見つめる。その目に宿る光は、出会ったときから変わらない、ただひたすらにまっすぐなものだった。


(やっぱり、綺麗な目)


 不思議だ。

 "殺した"だなんて、恐ろしい言葉が出ているのに、ちっとも怖くない。


 それは、その言葉をそのまま受け取ってはいけないと分かっているから。わたしが彼を信じているからだろう。


「どうせ……あれですよね? 自分は彼を助けられなかった、目の前で亡くしてしまった、そういうことでしょう?」

「どうして」

「先輩は……罪悪感に悩まされて、苦しんで、いつも無理をしている優しい人です。じゃないとそんなつらそうな顔してないでしょう」


 いつかの日、先輩がそう言ってくれたみたいに。同じ言葉を、今度はわたしが返す番。