「死んだんだ。俺が、殺した」
「……え」
「この海で、俺がアイツを殺したんだよ」
聞き馴染みのない言葉に息が詰まる。
ゆっくりと目線を上げて、先輩の瞳を見つめる。その目に宿る光は、出会ったときから変わらない、ただひたすらにまっすぐなものだった。
(やっぱり、綺麗な目)
不思議だ。
"殺した"だなんて、恐ろしい言葉が出ているのに、ちっとも怖くない。
それは、その言葉をそのまま受け取ってはいけないと分かっているから。わたしが彼を信じているからだろう。
「どうせ……あれですよね? 自分は彼を助けられなかった、目の前で亡くしてしまった、そういうことでしょう?」
「どうして」
「先輩は……罪悪感に悩まされて、苦しんで、いつも無理をしている優しい人です。じゃないとそんなつらそうな顔してないでしょう」
いつかの日、先輩がそう言ってくれたみたいに。同じ言葉を、今度はわたしが返す番。



