四月のきみが笑うから。


「少しでも届いてたなら、よかったぁ……」

「瑠胡ちゃんはすごいよ」


 安堵で息を洩らすと、ぎゅっと手を握ってくれる琴亜ちゃん。

 しばらくそうしていて、ふと気がついた。


「そういえば……ここまで運んでくれた……んだよね? ありがとう」


 むくりと身体を起き上がらせるのと同時にお礼を言うと、「え、違うよ?」と琴亜ちゃんは首を横に振った。


「ここまで運んできたのは私じゃないよ」

「え……じゃあ、いったい誰が」

「背の高い男の人。たぶん先輩なんだろうけど……すごく焦った顔してた。私てっきり、瑠胡ちゃんの彼氏さんかと思ってたんだけど」


 今度はわたしがぶんぶんと首を振る番だった。


「わたし、彼氏なんて」

「え、じゃああれは誰なんだろう。すごくかっこよかったんだけどな」


 心当たりがあるとするなら、たった一人だけ。


 だけど、期待するなと脳内の自分が叫んでいる。


 ふわりと鼻腔をついた優しい香りも、あたたかさも、わたしはすべて知っている。

 間違いない。わたしをここまで運んでくれたのは。


『素直になれないアイツを、誰よりも優しいアイツを、今度は瑠胡ちゃんが救ってやってほしい』

『もちろん、そのつもりだよ。わたしの意志で、助けに行くの』


 夢の中の言葉が蘇ってくる。