「少しでも届いてたなら、よかったぁ……」
「瑠胡ちゃんはすごいよ」
安堵で息を洩らすと、ぎゅっと手を握ってくれる琴亜ちゃん。
しばらくそうしていて、ふと気がついた。
「そういえば……ここまで運んでくれた……んだよね? ありがとう」
むくりと身体を起き上がらせるのと同時にお礼を言うと、「え、違うよ?」と琴亜ちゃんは首を横に振った。
「ここまで運んできたのは私じゃないよ」
「え……じゃあ、いったい誰が」
「背の高い男の人。たぶん先輩なんだろうけど……すごく焦った顔してた。私てっきり、瑠胡ちゃんの彼氏さんかと思ってたんだけど」
今度はわたしがぶんぶんと首を振る番だった。
「わたし、彼氏なんて」
「え、じゃああれは誰なんだろう。すごくかっこよかったんだけどな」
心当たりがあるとするなら、たった一人だけ。
だけど、期待するなと脳内の自分が叫んでいる。
ふわりと鼻腔をついた優しい香りも、あたたかさも、わたしはすべて知っている。
間違いない。わたしをここまで運んでくれたのは。
『素直になれないアイツを、誰よりも優しいアイツを、今度は瑠胡ちゃんが救ってやってほしい』
『もちろん、そのつもりだよ。わたしの意志で、助けに行くの』
夢の中の言葉が蘇ってくる。



