四月のきみが笑うから。


「もちろん私はなにもしてないの。一部の人たちからなんでだか知らないけど、色々思われちゃうらしくて。でもきっと贅沢な悩みって部類に入るのかなって思って、誰にも言ってこなかった。あなたの彼氏が勝手に好きになってきたんです、なんて口が裂けても言えないよ」

「それは贅沢な悩みなんかじゃないと思う、けど」

「え?」

「声を上げてもいい、ちゃんとした悩みだし、いじめだよ」


 手を伸ばすと、慌てたように握られる。

 指先が少しだけ冷たかった。


「……ありがとう、瑠胡ちゃん。本当に……」

「ううん。わたしはただ、当然のことをしただけだよ。初めて会った日、琴亜ちゃんがしてくれたことのお返しがしたかった」


 お返しになったのか分からないけど、と続けると、首を振った琴亜ちゃんは、大きなアーモンド型の目に涙を浮かべる。


「助けてくれて、嬉しかった。瑠胡ちゃんの言葉に救われた人、たくさんいるよ」

「……そう、だといいけど」


 ふっと笑うと、強く頷きが返ってくる。

 倒れる前に見た、緋夏とその他の子たちの泣きそうな顔が浮かんだ。