四月のきみが笑うから。



「っ……!!」


 真っ白な視界がクリアになっていく。

 最初にわたしの目がとらえたのは、前髪をめずらしく左右に分けている琴亜ちゃんだった。


「瑠胡ちゃん……!? よかった、目覚めた! 今先生呼んでく……」

「琴亜ちゃん」


 待ってというように手を伸ばして制すると、彼女はあげた腰をおろして丸椅子に座り直す。

 それから会話がしやすいようにと、横になるわたしを少し覗き込むような体勢になった。


「いつから……されてたの、あんなこと」


 喉が詰まって苦しい。

 掠れていてところどころ声が消えてしまうけれど、なんとか絞り出して訊ねる。


「いつからだったかな……でも最近? なんだよね。あんまり覚えてないけど」

「覚えて、ないの?」

「なんていうか……こういう恋愛関係? のゴタゴタって日常茶飯事で。もう慣れたっていうか……まあ、慣れるものではないと思うんだけどね」


 彼女はへにゃりと力の抜けたような顔で笑った。