四月のきみが笑うから。


「だからこんなこともうやめよう。わたしと一緒にいようよ」

「……っ」


 震えながらスマホを握りしめる子にも、同じように手を差し伸べる。


「マキ! アサ!」


 目を見開いた緋夏が、二人を交互に睨みつける。

 怯えたように瞳を揺らす二人は、視線を地面に落とした。そのまま沈黙が降りる。

 生ぬるい風が頰を撫でた。


「……あたし、見たの。緋夏の彼氏が、古園さんに言い寄ってるとこ」


 ぽつりと。

 マキと呼ばれた子が、小さく言葉を洩らす。


「は……? なに言ってるのマキ。ふざけないで」

「ふざけてなんかない! 緋夏、あたしこんなことしたくないよ。今まで黙ってたけど、度が過ぎてる。一緒にいても全然楽しくない」


 伸ばした手に、繋いだぬくもり。

 そのまま引き寄せれば、マキは緋夏のほうを向いてまっすぐに立った。


「アサもエコも、ワカもさ、もうこんなことやめようよ。言いなりになるなんて、そんな弱いことするのやめよう!」


 マキの呼びかけに、唇を噛んだ人たちがぞろぞろとわたしのほうへと近づく。

 困惑したように目を見開いて固まる緋夏へと向き直った。