気付いたら声に出していた。死にたいとか、消えたいとか。そんなマイナスな感情とはどうやっても結びつかないような彼も、わたしと同じように思ったことがあるのだろうか。あまりにもかけ離れすぎていてにわかに信じがたい。
「死にたいはねえけど……消えたいは、あるかな」
ふはっ、と脱力したように笑う彼は、ここではないどこかを見つめていた。その表情に、思わず息を呑んでしまう。
(なんて不思議な人なんだろう)
身体の中心とすべての意識が彼に引っ張られているような感覚だった。明確な理由などないのに、もっと話してみたい、知りたいと心が叫んでいる。ほわほわとした未だ名前を知らない感情がずっと心に居座っている。
「死にたいわけじゃねえけど、生きたくもなくなんの。あの感情って何なんだろうな」
初めてだった。死にたくないけど生きたくもないなんて、そんなことを口にする人と出会ったのは。わたしが日々思っているようなことを言語化してくれる人に出会ったのは。
毎日気持ち悪くて吐きそうで逃げ出したいと思っているのに、どうして気持ち悪いのかが分からない。何が嫌で、どこに逃げたいのか分からない。大事な部分が分からないから改善のしようがない。明確な理由がないものを他人に理解してもらうのは難しい。分からない、は理由として成立しないのだろうか。
学校を休むのにも、部活をしないのにも、塾を辞めるのにも理由がいる。そしてそれが『やりたくない』『行きたくない』だった場合、怠けるなと言われてしまう。それでも首を横に振れば、ついには見放されてしまう。
それがいちばん怖いから、毎日毎日必死に生きていくしかない。
じわりと視界が涙で滲む。我慢しようとすればするほど、溢れて止まらなかった。
「死にたいはねえけど……消えたいは、あるかな」
ふはっ、と脱力したように笑う彼は、ここではないどこかを見つめていた。その表情に、思わず息を呑んでしまう。
(なんて不思議な人なんだろう)
身体の中心とすべての意識が彼に引っ張られているような感覚だった。明確な理由などないのに、もっと話してみたい、知りたいと心が叫んでいる。ほわほわとした未だ名前を知らない感情がずっと心に居座っている。
「死にたいわけじゃねえけど、生きたくもなくなんの。あの感情って何なんだろうな」
初めてだった。死にたくないけど生きたくもないなんて、そんなことを口にする人と出会ったのは。わたしが日々思っているようなことを言語化してくれる人に出会ったのは。
毎日気持ち悪くて吐きそうで逃げ出したいと思っているのに、どうして気持ち悪いのかが分からない。何が嫌で、どこに逃げたいのか分からない。大事な部分が分からないから改善のしようがない。明確な理由がないものを他人に理解してもらうのは難しい。分からない、は理由として成立しないのだろうか。
学校を休むのにも、部活をしないのにも、塾を辞めるのにも理由がいる。そしてそれが『やりたくない』『行きたくない』だった場合、怠けるなと言われてしまう。それでも首を横に振れば、ついには見放されてしまう。
それがいちばん怖いから、毎日毎日必死に生きていくしかない。
じわりと視界が涙で滲む。我慢しようとすればするほど、溢れて止まらなかった。



