四月のきみが笑うから。


「こんないじめみたいなことしてても、何も面白くないじゃない。これ以上わたしの友達を傷つけるのはやめて!」

「ウザいのよ!!」


 つかつかと歩み寄ってきた緋夏が、思い切りわたしの肩を押す。


「……っ!!」


 力に耐えられず、花壇に倒れ込む。

 あ、と思ったときにはすでに遅かった。


(花が……!)


 ぐしゃっと生命が消える音がした。

 慌てて飛び退いたけれど、茎の部分から折れてしまっている。


「ごめん……! ごめんね……っ」


 あれほど丁寧に手入れした花が。

 こんなにもあっさりと折れてしまった。


 ふつふつと、怒り以上の何かが渦巻いて、悲しみや悔しさが混ざり、大きな黒い感情となる。声を上げるならばここしかない。


 いつも自信がなくて、目立ちたくなくて、人より優れなくていいから劣りたくない。

 そう思って、存在を消すように息を潜めて生きていた。けれど、そんなふうに生きるのは、もう終わり。


 人を変えるには、自分が動かないとダメだ。

 人に期待などしてはいけないと、知っているから。