凪と前よりも親しくなれて学校生活がより充実したものとなっているうらら。

そこに舞い込んできた悲報。

高一になって初めての中間テストだ。範囲は発表され、数週間後にはテストが始まる。

始めてのテストで不安なうらららの様子を横目で見る凪。


◯教室(放課後)

数人がテスト勉強で教室に残っている。家で勉強すると誘惑(漫画やお菓子)が多いことから教室で勉強することにしたうらら。

掃除を終えて戻ってきた凪に「お疲れ様」と声をかけ、再び集中するが、わからず壁にぶち当たる。並んでいると凪が解き方を詳しく教えてくれる。

うらら「凪くんって頭いいよね」
凪「それ基礎中の基礎だから簡単だろ」

二人は顔を見合わす。

うらら「簡単かどうかは私が決めますぅ!」

ふんっと拗ねたふりをすれば、「はは」と笑う凪の声が鼓膜を揺らす。

うらら「ねぇ、凪くん」
凪「なに」
うらら「もし良ければなんだけど、私に勉強を教えてくれないかな。基礎中の基礎も自信ない…」

(情けない私…!)

凪は一瞬考えたが、うららの頼みを受け入れることにした。向かい合うようにして座る二人。

凪の教え方はわかりやすく、勉強が苦手なうららでもすぐに頭の中に入ってきた。

問題を全て解くことができ、おまけに全問正解。うららは嬉しくなり、「凪くんのおかげだよ。ありがとう!」と凪の手を無意識に握ってしまう。

女子への免疫力がない凪は突然のことに驚き、手を引っ込めようとしたが、うららの手にぬくもりを感じ、どこか安心している自分を見つけた気がした。

クラスメイト「え、廣瀬くんって勉強得意なの?」
クラスメイト「俺も教えてほしいんだけど!」
クラスメイト「てか、みんなでやらね?」
クラスメイト「賛成!協力して中間テスト乗り切ろう!」

うららと凪の様子を見ていたクラスメイトがわらわらと集まり、いつのまにか二人の周りは大きな輪を作っていた。

凪は動揺している。
クラスでもどこか浮いた存在(一匹狼感)だった凪の周りに人が集まり、又、話しかけている光景をうららは嬉しく思った。

和気あいあいとしている雰囲気の中、クラスの扉が乱暴に開けられ、男子が数人入ってくる。

男子A「戸上うららちゃんっている?」
男子B「俺ら、友達に頼まれてうららちゃん連れてかなきゃなんないんだけど——」

凪がうららの前に立ち、隠す。
その際、凪はうららの手を掴んでいる。
うららは掴まれた手を見る。

うらら「(凪くん、女子が苦手って…)」
↑この時、さっき握ったことは無意識の為、覚えていない。
凪「行くことねぇから」
うらら「え」
凪「戸上のこと、守るし、安心しろ」
うらら「……」

男子Aが全問正解だったうららのノートを手に取り、目の前で破り捨ててしまう。それを見たうららは駆け寄り、ノートを抱きしめる。

凪「戸上!」
うらら「凪くんが一生懸命教えてくれて解けた大切なノートなのに最低!」

男子A「戸上うららちゃん発見」
男子B「連れてこーぜ」

うららに触ろうとした男子を凪が阻止する。
傍観していた他の男子たちが凪を囲む。

男子B「お前一人でなにができんの?」
凪「俺一人で十分だろ」

その一言で頭に血が上った男子Bは凪に殴りかかる。しかし、喧嘩馴れしている凪くんにとってはそよ風にすぎない。軽く交わし、向かってくる男子たちの蹴りやパンチを全て交わしていった。

そこに凪の取り巻きである女子の群れが「まだ?」「なに手こずってんの?」と現れる。しかし、まさか凪と男子が喧嘩してるとは思わず、青い顔をする取り巻き。

凪は取り巻きに近づき睨む。

凪「指示したのはお前ら?」
女子「…え、えと、」
凪「正直に言うなら、今は見逃してやる」
女子「ご、ごめんなさい!!」
女子「いつも凪くんのそばにいる戸上って子にむかついてっ」
女子「ちょっと嫌がらせしてやろうって思ったの」

自分のせいでうららを傷つけたことに申し訳なさと、怒りで壁を殴る。

凪「次、戸上に手を出すなら、俺はお前らを許さねぇ」

あまりの恐怖に涙目になりながら、取り巻きは退散。男子も後を追うように去ってしまった。


さっきまでとは違いしんみりとした教室内。凪は周りを怖がらせてしまったことや、不甲斐なさから教室を出ようとする。しかし、クラスメイトの一言が凪の心を救う。

クラスメイト「廣瀬、お前、まじかっこよすぎかよ!」

うららからお礼を言われ、クラスメイトからはうららを守った男として称賛され、凪は動揺し、別の意味で顔を赤くした。