◯教室(朝のホームルーム前)
ホームルーム前ということもあり、それぞれの過ごし方をしているクラスメイト。
物語のヒロインである【戸上うらら】は友達の森野マリと会話をしていた。
すると、突然廊下が騒がしくなったので視線をやる。女子の群れを作りながら教室に入ってきたのは物語のヒーローである【廣瀬 凪】だった。
凪の容姿▷黒髪、センター分けの前髪、片耳ハーフピアス、口元にほくろ、二重
マリ「廣瀬くん、相変わらず人気者だね」
うらら「ファンクラブもあるらしいよ」
マリ「そうなんだ!ちょっと気になるかも」
うらら「だね」
凪はうららの隣の席に座る。
うららとマリは凪の話をやめ、マリは自席に帰る。
教室の外で騒ぐ女子の群れにうんざりした様子の凪に思わず声を掛けるうらら。
うらら「…大丈夫?」
凪「大丈夫」
うらら「よかった。もし、うるさかったらドア閉め、」
凪「余計なことしなくていいから」
うらら「え」
凪「必要以上に俺に関わんないで」
簡単には飛び越えられそうにない壁を作られてしまい、それ以上は何も言えなくなってしまう。
◯回想(高校受験当日)
受験に必要な物を確認し、家を出たうらら。
試験会場に着き、準備をしている中、筆箱に消しゴムが入っていないことに気づく。電車の中で勉強をした際、うっかり落としてしまったらしい。どうするか悩んでいると隣に座っていた男の子から、スッと消しゴムが差し出される。男の子は何も言わず、ただまっすぐ前だけを見ている。綺麗な横顔、優しい心遣いにうららは感動する。
うらら「あ、ありがとうございます(小声)」
男の子「(小さく頷く)」
(回想終了)
(現実に戻る)
消しゴムを貸してくれたその人が今、隣に座っている凪くんだ。ぶっきらぼうだけど優しい人。
うらら「(凪くんは気づいてないだろうけど)」
◯昼休み(廊下)
マリとお弁当を食べたあと、ひとりでトイレに向かう。途中、ふと窓の外を見ると凪と数人の男子が校舎裏に向かうのが見えたので気になり、トイレではなく凪の後を追う。
うらら「(凪くんと、誰だろう。一年?楽しげな雰囲気ではなさそうだな)」
◯昼休み(校舎裏)
凪を囲む男子たち。建物の陰から様子を伺ううらら。
男子A「お前、一年のくせに生意気なんだよ」
男子B「ピアスとかなめてんの?」
凪は興味なさそうは表情で男子たちを見る。
男子の言葉から先輩だと察するうらら。
男子C「なんとか言えよ!」
男子Cが凪の胸ぐらを掴み、殴るポーズを取る。
うららが止めようと陰から出た直後、胸ぐらを掴んでいる男子Cの腕を片手で掴み上げる凪。その間も涼しい顔をしている凪。(うららは凪の背後にいるので、イラストになった際の表情や行動を記載しております)
凪「貧弱な腕だな。折ってやろうか?」
男子C「っ、いた、!」
凪「痛い?なんも力入れてねぇけど」
男子Cの表情がみるみるうちに苦しくなっていく。周りにいた男子AやBも後退る。
男子A「な、なんだよお前!」
凪「俺すか?廣瀬凪っていいますけど」
男子C「も、もうやめてくれ。折れる!」
凪「弱ぇな」
凪は手を離す。その場に尻もちをつく男子Cを冷たい目で見下ろしながら、同じ目線までしゃがむ凪。
凪「弱ぇくせに喧嘩ふっかけてきてんじゃねぇよ」
男子A、B、C「「「す、すいませんでした!!」」」
男子A、B、Cは泣きそうな表情で逃げて行く。
その場に残された凪と、陰から出てきたはいいが、後に引けなくなりキョロキョロするうらら。凪が振り向き、うららの存在に気づく。
凪「なにしてんの」
うらら「えっ、やっ、えと、な、殴られそうになってたから…助けようかなと…」
凪「…」
うらら「…はは。でも、そんな心配がないくらい、凪くんは強かったね」
うららは前髪を直すふりをして、苦笑いをする。
足音が近づく。凪が目の前に来る。
凪「度胸あんのな」
少しだけ口角を上げ、小さく笑う凪。
風が吹き、髪が靡く。
胸ぐらを掴まれたからか凪の制服の首元が乱れていることに気づいたうららは、無意識に手を伸ばし乱れた制服を直そうとする。凪は驚き、咄嗟にうららの手首を掴む。が、すぐに離す。
うらら「あ、ごめん」
凪「さっきも言っただろ。余計なことすんなって」
うらら「そ、そうだよね。ごめ、」
凪「直すなら、さっさと直せよ」
うらら「(意外と素直だ。それにしても顔が赤いなぁ)」
凪「…あんま、こっち見んな」
うらら「もしかして、照れてる?」
凪「なっ、」
凪は顔を真っ赤にし、うららから離れようとするも、うららがシャツを掴んでいる為、離れることができない。
喧嘩は強いみたいだが、意外と照れ屋な一面を見て、うららの心がドキドキと胸を打つ。
うらら「明日もこんな風に話してくれる?」
凪「…は?」
うらら「私、凪くんと友達になりたい!」
凪「…」
うらら「友達になろう!」
凪「…好きにすれば」
顔の赤みが治らない凪と嬉しそうに笑ううらら。