「ふふふ」


 急に笑い出した私を、二人は目を見開いて見ていた。


「急にどうした?」

「皇后なんて押し付けるから、おかしくなってしまったんじゃないですか?」

「いえ……こちらの話なだけです」


 そう。こちらの話。

 だってそう。巻き込まれるとか、生き残るとか。

 何も決まってないし、何も知らないのに勝手にそんな未来を想像していた自分が可笑しくなってしまっただけ。

 未来なんて今まで考えたコトもなかったのに。

 だって人間なんて所詮、成るようにしか成らない
ワケで、考えるだけ無駄だって思っていた。

 でもだからこそ私は無敵で、どんなことも臆することなく出来ていたのだけど。

 ただ行き先が……住む場所や環境が変わっただけで、考え方がこんなにも変わるだなんて可笑しい以外の何物でもないわ。

 私、らしくない。

 どうせ成るようにしか成らないのだから、今まで通り好きに生きないと。


「私は力はありませんが、まぁ成るように成りましょう。細かいコトは気にしないで下さって結構です」

「そうは言っても!」

「私も気にしませんので。ただ、やられたらやり返すだけです」

「そこで命を落としたらどーするんです」

「その時はその時。そこまでの命だったのでしょう」

「そこまでって」

「だってそうでしょう? 人なんていつ死んでどうなるかなど、誰が分かるのですか? それなら私は自分の思うようにテキトーに生きていきたい」

「それは……そうですが」

「心配して下さるのはとても嬉しいです。そしてその時はその時と言っても、簡単に死ぬつもりもありません」


 諦めてはいても、まだ手放すつもりはない。

 私は私の生きたいように生きたいだけ、だから。

 私は微笑みならが、真っ直ぐに二人を見た。


「ここで生きて行けというのでしたら、どうぞ手を貸して下さい。それに陛下は思うところがあって、私などを皇后にとおっしゃられたのでしょう?」


 そこだけは気になる。

 陛下は何を思って、私を皇后に言い出したのか。

 空燕の言うように、普通ならありえない。

 死んでもいい人材として据えるにしても、私はあまりに非力だから。

 他に本命がいるのならば、影武者としても私は力不足なのよねぇ。

 もっとも、恨みは買いやすそうだけど。

「なにを……か。先ほどから二人ともそればかり気にしているようだが、そうだな……。一番はその強い瞳と、あの広場での態度がな」

「広場の態度って、まさか入場した際の他の娘たちとのやり取りを見ていたのですか!?」

「まあ、そうなるな」


 あのやりとりを見られていただなんて。恥ずかしい。


「女官にすらなれないと囲まれていたのに、構わないと言って全く気にする様子もなかったしな」

「だって、だってそれは……」

「成るようにと言っていたが、周りに流されず、かつ何を言われても下を見ることもなく、自分の思うように生きる。そんな瞳に思えた」

「買いかぶりすぎです」

「そうか? 俺によく似た強い瞳だ。その強さは霊力などに負けぬ強さがある」

「ぅぅぅぅ」

「そしてその強く美しい瞳が欲しいと……何色にも染まっていないそなたが欲しいと純粋に思ったから選んだつもりなのだが?」

「も、もうそれぐらいにして下さい!」