「うんうん。ソフィア様、我ながら凄く上手に出来ました!」
「いつもありがとう。ミリアさん」
「いえいえ。次期王妃様にお仕え出来て、光栄です」

 王太子様が、エルフのソフィア様と結婚する! と遠回しに言ってから、早十年。
 あの時のソフィア様は王太子様の言葉の意図を理解しているのかどうかわからなかったけど、敷地の隅にあるご先祖様の秘密の部屋へ行ってから、急激に二人の仲が進展した。
 こっそりついて行ったというリディアさんは、あの時何があったのかを教えてくれないけど、リディアさんが王太子様への想いを断ち切れたようで良かったと思う。
 それでも、王太子様がソフィア様を人前で溺愛するようになってから、リディアさんが動揺しなくなるまで五年くらいかかっていたけど。
 ……もしかして、王太子様がリディアさんに諦めさせるように、わざと見せつけていたとか?
 まぁいずれにしても、私に真実はわからないけどね。

「しかし、初めてソフィア様の髪やドレスをセットさせてもらった時と比べて、本当に大きくなられましたよね」
「そうね。十年前は本当に幼かったですからね」
「でも、ソフィア様はエルフの年齢で言うと、まだ十一歳なんですよね? 人間の私からすると、今のソフィア様は十八歳くらいに見えますけど」
「エルフは、成長する時は一気に成長して、暫く同じ様な容姿が続く種族なんですって。だから、たぶんあと百五十年くらいは、この容姿らしいわ」
「ふわぁー! いいなー! 羨ましいです!」

 これから百年以上も十代半ばの容姿で居られるとか……エルフっていいなぁ。
 しかも、幼い頃から綺麗だった顔が更に美しくなっていて、背は高くなったのにスリムなのは変わらず……いや、エルフってずるいよ!
 ソフィア様は、この国へ来た当初は魔法を暴走させる事がしばしばあったらしいけど、今では魔法の制御も完璧らしいし、薬草にも精通している上に、誰も思い付かないような斬新な統治方法を王太子様に提案しているとか。
 たまーに、日本では……ってよく分からない言葉を呟くけど、それ以外は完璧だもん。
 いやー、私もエルフに生まれたかったよ!

「ソフィア様。そろそろお時間です」
「そうね。じゃあ、行ってきますね」
「はい! 頑張ってください!」

 私の言葉に、ソフィア様が微笑み、部屋を出て行った。
 うーん。王太子様の婚約発表かー。
 私たちメイドからすると今更って感じだけど、王太子様が他の種族と婚姻を結ぶのはかなり大変みたいで、王太子様が国王様とソフィア様のご両親を説得して回り、同時にソフィア様と二人で地方を統治して結果を出して……二人とも凄いね。
 さて、私も部屋の隅から、お二人を祝福させていただきますか。
 王太子様も、ソフィア様も、お幸せに!