エドワードが目指しているという独白の部屋。
 その扉を何とかして開けなければならないのだけど、その作成者が長老だった。

「ねぇ、お爺ちゃん。私に黙って普段の行動を覗いて訳だし、扉を開けてくれても良いと思うの」
「そ、それとこれとは別問題なのじゃ。流石にこればっかりは可愛いソフィアの頼みでもダメなのじゃ」
「えぇー」
「じゃ、じゃが、ワシも孫娘が可愛いのじゃ。ハグさせてくれたら……」
「あ、それならいいや」
「ソフィアぁぁぁっ!」

 長老が同行する事になって、随分と騒がしくなってしまったけど、ひんやりと冷たい洞窟の中を歩いていく。
 正直言って、エルフの服は薄着なので、結構寒いんだけど、この寒さの原因が私なので何も言えず、我慢して歩いていると、

「ソフィアさん。これをどうぞ」
「えっ? エドワード? これは?」
「鎧に付いていたマントです。僕は寒くありませんが、ソフィアさんが寒そうにされているので」
「あ、ありがとう」

 エドワードがマントを外して渡してくれたので、有難く羽織らせてもらう事に。
 うん。布一枚だけしか変わらないんだけど、すっごく温かい。

「くっ! やるではないか。じゃが、ワシが本気を出せば、そもそものこの洞窟の寒さを解消出来るのじゃっ! ……ヒート・ウェイブ」

 長老が何かの魔法を使うと、洞窟に温かい風が吹き……少しするとまた冷えてきた。

「な、なんじゃとっ!? くっ……我が孫娘ながら、相変わらずソフィアの魔力量が異常なのじゃ」

 どういう事かと聞いてみると、長老はこの洞窟全体の霜を溶かす魔法を使ったはずなのに、私の方が使用した魔力量が多く、生み出した霜が全く消えなかったらしい。
 まぁその……使ったのが初級魔法だからね。未だに私が魔力量のコントロールを出来ないので、必要以上の魔力を込めている訳だし。

「とりあえず、エドワードが貸してくれたマントで寒くないし、先へ進もうよ」
「くぅぅぅっ! ワシの方が生まれた頃からソフィアの傍に居るのにっ!」
「分かります! 分かりますよ、エルフの長老様! 私も、幼い頃から坊ちゃまのお傍に居るのです! それなのに……」

 あー、長老のせいで、落ち着いていたリディアさんがまたおかしくなり始めた。
 どういう理屈でそうなったのかは分からないけど、リディアさんの中では私とエドワードが結婚する事になっているみたいなのよね。
 どうしたものかと内心頭を抱えながら歩いていると、カンテラの明かりに、大きな扉が照らし出された。
 どうやらここが目的の独白の部屋で、攻撃してくる扉というのが、これの事らし……い?

「あの……エドワード。扉……開いているんだけど」
「そ、そうですね。何故でしょうか」

 何故か扉が半分程、向こう側に開いている。
 これは、通ろうとしたら急に閉まって挟まれる……という罠なのだろうか。

「な、なんとっ! ワシが作った扉が、ソフィアの魔法で氷漬けになっている上に、完全に壊れておる!」

 ……あー、あの氷魔法で出した霜が、こんなに奥まで届いていたんだ。
 間違っても、他の魔法を使わなくて良かった。

「えっと、エドワードは部屋に入る資格があるってお爺ちゃんが言っていたし、入ろっか」
「そ、そうですね。行きましょうか、ソフィアさん」
「えっ!? 行くの!? そこは、ワシが扉を直すのを待って、改めて二人で試練を乗り越えるとか……ソフィア? ソフィアぁぁぁっ!」

 何故か長老さんが泣きそうになっているけど、せっかく開いているので、そのまま部屋の中へ入ってみた。