「うぅ……眠い」

 いろいろ考えていたら、いつの間にか寝ていて朝を迎えていたんだけど、あんまり寝た気がしない。
 とりあえず、顔を洗って着替え、朝食を食べに食堂へ。
 食堂のオバちゃんにいつもの朝食をお願いすると、なぜか大盛りで出てきた。

「あの、すみません。これ、私には多いような……」
「何言ってるのよ。今日もデートでしょ? 男の子の前でランチを食べ過ぎないように、朝はしっかり食べておかなきゃ」
「えっ!? な、何故それを……はっ! しまった! 誘導尋問っ!?」

 食堂のオバちゃん、恐るべし。
 寝ぼけたまま応対してしまった私も悪いけど、まさか寝起きから、こんなトラップがあるなんて!

「誘導尋問って……難しい言葉を知っているのね。別にそんなんじゃなくて、毎日デートみたいなものでしょ?」
「ふ、普段は違いますってば」
「でも今日はデートでしょ? 寮の前に豪華な馬車が停まっているから、すぐに分かったわよ」
「まぁ確かに今日は……って、待って! 寮の前に馬車が停まってる!?」
「えぇ。とはいえ、みんなソフィアさん待ちだって分かっているから、誰も騒いでいないけどね」

 ボーッとしていて気付かなかったけど、よくよく周囲を見てみると、みんなから見られていた。
 というか、エドワードを待たせているのっ!?
 今すぐ……はお腹が空くし、ご飯を残すのはイヤなので、急いで食べる。
 食べ終わったら身支度を……って、服はエルフの服と、制服と訓練着しか持ってなかった!
 既に待たせているし、今着ているエルフの服のままで慌てて寮の門へ向かうと、私の姿を見つけたからか、エドワードが馬車から降りてくる。

「ソフィアさん。おはようございます」
「お、おはよう。というか、迎えに来るとは聞いていたけど、早すぎない!?」
「えっ? そうですか? 食堂の方から、普段ソフィアさんが朝食を食べに来る時間を聞いて、それを基に食べ終わってから一時間ほど空けるように来たのですが」

 ……あ、うん。私が寝坊したというか、起きるのが遅かったのよね。

「それより、立ち話も何ですから、馬車へどうぞ」
「あ、ありがとう」

 いつものようにエドワードがエスコートしてくれて、馬車に乗ると、メイドさんが紅茶とクッキーを出してくれた。
 朝ご飯を食べたばかりとも言えず、紅茶だけ頂く事に。

「ところで、今日は何処へ行くの?」
「そうですね。何処から説明すれば良いか迷いますが……端的に言うと、僕たちの将来を左右するかもしれない場所です」

 そ、それってどういう事なのっ!?
 いやいや、私たちはまだ子供……あ、でもエドワードは貴族だから、日本の感覚じゃダメって事!?
 こ、婚約しちゃったり、破棄されちゃったりする世界なの!?
 どうしよう! と思っていたら、メイドさんの一人がエドワードに声をかける。

「坊ちゃん。その言い方は、間違ってはおりませんが、お嬢様が混乱してしまいます」
「うーん。じゃあ、独白の部屋……かな」
「こ、告白の部屋っ!?」

 な、な、な……それって、既に言っているようなものでは!?
 いや、エドワードにはよくしてもらっているし、きっと同世代では一番仲が良いけど……えぇぇぇっ!?

「坊ちゃん。ソフィアさんが勘違いするように、わざと仰っていませんか?」
「えぇっ!? あの場所の正しい呼称なんだけど」
「それはそうですが、さっきの言い方の後にそれは、聞き間違えられても責められませんよ」

 あ、告白の部屋ではなかったんだ。
 び、ビックリしたー!
 自分でもわかるくらいに顔が熱くなっていて、私の中で一番メイクが上手いメイドさんが、微笑ましく見つめてくる。
 やめてっ! 私の勘違いなのよねっ!? 恥ずかし過ぎるっ! 暖かい目を向けないでーっ!
 ひとまず私が落ち着くまでエドワードが待ってくれたんだけど、顔の火照りがなかなか治らず、結局説明がないままに目的地へ着いてしまった。