魔法学校へ来て、初めての週末を迎えた。
 ちなみに、昨日は何事もなく無事に帰宅したと、エドワードから魔道具で連絡が来ている。
 日本のメールみたいに言葉を送る魔道具で、便利なんだけど物凄くお高くて、校内で持っているのは学園長とエドワードだけらしい。

「うーん。何をすれば良いんだろう」

 今まで休日がなかったので、何をすれば良いかわからず、とりあえず学校の図書室へ行ってみる。
 どうやら、司書の先生はいないから持出は出来ないけど、読む分には構わないらしい。

「じゃあ、薬草学に関する本を……これかな?」

 適当に本棚を眺め、それらしい本を手に取ると、席に座って読み込んでいく。
 薬草大辞典って感じの本で、様々な薬草の絵が描かれていて、どんな効能があるとか、効果的な使い方とか、更には花言葉や草言葉みたいなのまで書かれていた。
 半分くらい読んだところで第二章となり、薬草がもつ毒性について書かれている。
 一般的には薬草とされている植物でも、使い方によっては毒になり得るという話だ。
 また、元々毒草と分類されている植物についても書かれているんだけど、そういう植物は薬草に似ているものが多いので注意が必要らしい。

「……ふぅ。面白かった。次は……」

 司書の先生が居ないからか、それともお休みだからか。図書室には私しかおらず、好きな本が読み放題だ。
 ただ、魔法の本は内容がイマイチなのが残念だけど。
 とはいえ、薬草学の本は私が知らない事がいっぱい載っているので、端から順に読んでいると、クゥっとお腹が鳴ってしまった。

「そういえば、お昼ご飯をまだ食べてな……あれっ!? もう夕方なのっ!?」

 気付いたら窓から入る光が茜色に染まっていたので、本を片付け、寮の食堂で早めの夕食をいただく事に。

「すみませーん! ちょっと早いけど、夕食お願いしても良いですかー?」
「はいはい。あら? ソフィアちゃんじゃない。お昼は来てないわよね? どうしたの? ……あっ! ごめんなさいねぇ。今日もデートだったのね」
「……はい? いやあの、何の話ですか? あと、今日も……というか、デートなんてした事ないですけど」

 食堂のオバちゃんが、凄く楽しそうにしているけど、デートなんてエルフになってからは勿論、日本人の時にもした事ないからっ!
 ……いや本当に、悲しいくらいに仕事だけの人生だったわ。

「えっ!? でも、いつも真っ白で豪華な馬車に乗って、何処かへ行っているんでしょ? オバちゃん、詳しくは知らないけど、噂になってるわよー?」
「あー、それはクラスメイトの家に行って、魔法の家庭教師をしているだけですよ」
「クラスメイト……豪華な馬車。……はっはーん。なるほどねぇ。そういう事なのねぇ」

 あの、どういう事なの?
 オバちゃんが何を思ったのかは知らないけど、つっこめばつっこむほど、夕食が遅くなりそうなので、触れない事にした。
 それから、美味しいパスタをいただき、お風呂に入って、ベッドへ。
 本しか読んでないけの、休日の過ごし方ってこれで良いのかな?
 そんな事を考えながら、再び授業と家庭教師に励む日々が続き、魔法の実践授業で火魔法を使ってボヤ騒ぎを起こしたり、氷魔法で学校長を氷漬けにしたりもしたけど、二度目の週末を迎える前日……

「ソフィアさん。明日の週末ですが、少しお時間をいただけないでしょうか」
「ん? 別に良いけど……どうしたの?」
「はい。ソフィアさんに、どうしてもお付き合いいただきたい場所がありまして」

 いつもの寮へ送ってもらう馬車の中で、エドワードが付き合って欲しいと。
 ……いやいやいや、これはアレよ。
 勉強に付き合って欲しいとかってオチに決まっているんだから!
 だって私、子供だもん!
 ないないない。
 という訳で、エドワードに構わないと応えると、

「では、明日の朝に寮まで迎えに行きますね」

 私を寮まで送ってくれた後に、そう言って帰っていった。
 ……うん。きっと勉強。いつもの日常と変わらないんだから。
 という訳で、お風呂に入って早く寝ようと思ったんだけど……うぅ。どうして目が冴えちゃうのっ!?