エドワードの家に行った翌日。
 久々に甘いものを……それも、とても美味しいスイーツを食べた幸せを思い返しつつ、家庭教師を引き受けたけど、何をすれば良いのだろうと考える。

「うーん。見事に、甘いものに釣られちゃったわね」

 けど、あれだけ美味しいものを出されて、かつお土産にクッキーまで貰ってしまったので、今更断れないが。
 とりあえず、エドワード本人に聞いてみようと思いながら学校へ。
 少し早めに登校し、先ずは魔法理論の教科書の目次を確認する。

「……あれ? 目次に魔力の制御とか、コントロールって言葉が……ない?」

 図書室の司書さんから聞いた話だと、教科書が一番詳しいという話だった。
 もしかして、そんなに大きな項目じゃなくて、何か別の内容に含まれているって言葉なの?
 そうだとしたら、探すのはちょっと面倒ね。
 教科書の最後に、索引とかも無いので、最初のページからパラパラと見ていく事に。
 二割くらい見て、なかなか見つからないなと思った所で、エドワードがやって来た。

「ソフィアさん。おはようございます」
「エドワード、おはよう。えっと、昨日は招待してくれてありがとう。本当に美味しかったわ」
「いえいえ。僕もソフィアさんに喜んでいただけて嬉しいです。本日も、我が家のパティシエが、腕によりをかけてスイーツを作ると言っておりますので、お楽しみに」

 昨日のシフォンケーキは美味しかったので、今日のスイーツも楽しみ……って、そうじゃない。

「えぇ、ありがとう。ところでその家庭教師の話なんだけと……」
「はい。……あ、報酬のことですか? 勿論、スイーツとは別にご用意させていただきますよ?」
「いえ、報酬の話ではなくて、何を教えれば良いのかなって」
「そうですね。授業で習う事は教師に聞けば済むので、習っていない事を教わりたいのですが……そうですね。実技はどうでしょうか?」

 実技……って事は、実際に魔法を使うって事よね?
 理論を教えてって言われても困るし、私としてもその方が良いんだけど、問題が二つ。

「構わないけど、エルフの魔法は教えてもエドワードには使えない可能性もあるわよ?」
「それは重々承知の上です」
「あと、使うなら中級……人間側だと上級って呼ばれている魔法に限定させて。それより下の魔法は、私が暴走させちゃうから」
「あはは、そうですね。流石にいろいろと破壊されると困る物がありますからね」
「今の二点を飲んでくれるなら、大丈夫よ」
「分かりました。では、今日から宜しくお願いいたしますね」

 改めてエドワードの家庭教師をする事になった所で、学校長が来て授業が始まった。
 最初の授業は化学だったので、どんな内容だろうかと、興味津々に話を聞く。
 ただ、算術があのレベルなので心配だったけど……思いの外ちゃんとした授業だった。
 まぁ化学というより、薬草学? って感じの内容だったけど。

 それから、魔法理論の授業になったので、これはチャンスだと、教科書をパラパラめくっていく。
 魔力のコントロールについて記載されている所を探し……いや、全ページ見たけど、載っていないのはどういう事なのっ!?
 なので、授業と授業の合間、休み時間に学園長の所へ。

「あの、魔法理論の教科書を最後まで確認したんですが、私が学びたい魔力のコントロールの話がどこにも載っていないんですが」
「それは仕方ないですよ。まだ一年生ですし。魔力コントロールは次の学年ですよ」
「……分かりました」

 という事は、三ヶ月で卒業って話だから、一ヶ月近くは魔力のコントロールの勉強が出来ないのか。
 うーん。今の時期の一ヶ月は貴重よね。
 さっきの薬草の授業は面白かったし、それを勉強しておこうかな。
 職に結びつくかは分からないけど、無駄にはならないよね。