長老に魔法の使い方を教えて……とお願いしたら、いきなり「では、まずは草魔法を使ってみよ」と言いだしたので、まずは理論から教えてもらう事にした。

「……というわけじゃ」
「なるほど。この世界には魔力っていうのが自然に存在していて、自分の身体の中にある魔力を使って、それに干渉する事で、様々な事象を起こすんですね」
「う、うむ。流石ソフィアじゃ。本気を出したら凄いではないか! 今までは、まだ本気を出していなかっただけなんじゃな」

 長老の回りくどくて、所々で余計な無駄話が入る話を辛抱強く聞き、要点を纏めてみた。
 会社の課長もこんな感じの人で、慣れていたから何とかなったけど、そうでなければ途中で心が折れていたかもしれない。
 それから、同じ様に魔力の使い方を教えてもらったので、改めて魔法を使ってみる。

「……グロウ!」

 近くに生えていた雑草に急成長させる魔法を使用すると、グングン大きく育っていった。

「……出来ちゃった」
「ふっふっふ。流石はワシの孫じゃ。とはいえ、それは基礎中の基礎の魔法。次は風魔法じゃ!」
「はいっ!」

 ……あれ? 次は……って言いながら、長老が家の中に入って行っちゃったんだけど。

「あの、長老さん? 風魔法を教えてくれるんですよね?」
「うむ。次は風魔法じゃな」
「いつ教えてくれるんですか?」
「そうじゃな。今日はソフィアが草魔法を使えるようになった事じゃし、十日後……でどうじゃ? 早過ぎるかの?」
「何を言っているんですか!? まだこんなに明るいじゃないですか! 今すぐ教えてください!」
「な、なぬっ!? たった今、草魔法を教えたばかりじゃぞ!? せめて七日くらいは休息を……」
「今すぐですっ!」

 いやいやいや。長老さんは、魔法の理論と草魔法の使い方を無駄話と共に話して、後は私が魔法を使うところを見ていただけだよね?
 それなのに、一体何の休息が要るのよっ!
 しかも一週間もっ!
 椅子に腰を下ろそうとしていた長老を引っ張り、再び外へ。

「うぅ……やっぱりソフィアはソフィアじゃった」
「何でもいいから、早く教えてください!」
「あまり老人に無理をさせてはいかんぞ……」

 長老がちょっと泣きそうになっていたので、ひとまず今日は風魔法で終わりにすると約束し、先程同様に教えてもらった。
 早速使ってみると、そよそよと優しい風が吹いてくる。

「むっ……この風は、まさに魔力で引き起こした風じゃ! まさか、この年で成功させるとは……」
「長老さん。私、凄い?」
「うむ。孫という贔屓目なしに凄いと言って良いであろう」

 やった!
 さっきの草魔法に比べて、目に見えないのでイメージが難しいという話だったけど、理科の授業で風が吹く仕組みを習っていたのが良かったのかな?

「長老さん。次は……」
「ソフィアの才能は認めるが、そんなに頑張り過ぎる必要はないのだぞ? ひとまず、十日程ゆっくり休むのじゃ。あと、ワシにも休みを……」

 うーん。風魔法で今日は終わりっていう約束だから仕方ないけど、別に頑張り過ぎてはいないんだけどな。

「そうだ、長老さん。何か紙とペンみたいな物ってある?」
「お絵描きでもするのか? そっちの倉庫にあるから、好きなのをもっていきなさい」
「ありがとうございます」

 長老さんにお礼を言って、教えてもらった倉庫へ。
 中には、麻の紐で束ねられた紙が幾つかあったので、その束を一つもらい、ペン……みたいな物も借りていく。
 思いっきり日本のノートとペンを想像していたけど、異世界にそんな物がある訳もなく、何かの植物の繊維を編んだような紙と、木炭に葉っぱを巻きつけたようなペンだ。
 でも、これで今日使った魔法の使い方や、理論を書き残す事が出来る。
 口頭での説明だけだと、どうしても忘れちゃいそうだからね。
 一旦、長老さんの家へ戻り、テーブルを借りる事にした。