学園長が出て来たので、早速文句を言おうと話し掛ける。

「ちょ……ちょっと、学園長さん」
「ソフィアさん。ご挨拶、ありがとうございます。では、教室へご案内しますね」

 いや、そうじゃなくて……話を聞いてっ!
 この人、全く私の話を聞こうとしないんだけど。
 うーん……わかった。この人に構っていると振り回されるだけだから、学園長の事はもう気にせず、自分の勉強に集中しよう。
 学園長と関わるのは、入学の時と卒業の時くらいだと思うしね。
 ひとまず自分のやるべき事を決めた所で、学園長が足を止める。

「この一年のSクラス……ここがソフィアさんの教室になります」
「わかりました。ご案内ありがとうございます」

 学園長にお礼を言って教室に入ろうとすると、先に学園長が扉を開く。
 担任の先生への引継ぎなら、教室へ入る前にしておいて欲しかったけど……まぁ仕方ないか。
 先生やクラスメイトはどんな人たちだろうかと、ワクワクしながら学園長に続いて教室へ。
 中には生徒が二人しかいなくて、先生がいない。
 どういう事なの?

「皆さん。先程ホールでお話し致しましたが、本校に入学してくださった、エルフのソフィアさんです。このSクラスに編入となりましたので、皆さん宜しくお願いします」

 そう言って学園長が、窓側の席に座るようにと指示してくる。
 とりあえず、言われたとおり席に着いたけど……担任の先生はどこなの?

「では、一時間目は魔法理論の授業です。ソフィアさんは、机の中に教科書を用意してありますので、そちらを使ってください」
「はぁ……あの、もしかして授業って学園長がされるんですか?」
「えぇ、もちろんです。この学校で、最も魔法に長けているのは私ですから。このSクラスて教鞭を取るのに、私が最も相応しいかと」
「そ、そうですか」
「とはいえ、それは昨日までの話。今日から、この学校で最も魔法に長けているのはソフィアさんですけどね」

 この人はまた余計な事を言う。
 チラッと他の二人の生徒の様子を見てみると……一人は無関心と言った感じで、もう一人はうんうんと大きく頷き、羨望の眼差しを私に向けてくる。
 やめてっ!
 魔法が凄いのは長老であって、私じゃないからっ!
 けど、これも実技の授業とかが始まれば、自ずと皆わかってくれるよね。
 だって、中級魔法しか使えないし、魔力をコントロール出来ないし。
 これ以上、授業の邪魔をするのも忍びないので、学園長の言葉を否定せずに、そのまま授業を受ける事にした。

……

「……となります。では、魔法理論はここまで。次は実技の授業となりますので、訓練場へ移動です。ソフィアさんは、私について来てください」

 初めての授業が終わった。
 体感的に二時間くらい?
 いや、実際はもっと短いんだろうけど……正直、何を言っているのか、全くわからなかった。
 そもそも話が難しいっていうのもあるけど、知らない用語ばかりなんだよね。
 それに、長老さんが教えてくれた魔法の理論ともあっていないような気がするし。
 ただ、ちゃんと教科書があって、体系立てて教えてくれるのは良い。
 そんな事を考えている内に、皆が教室を出ようとしていたので、私も慌てて学園長の後に続く。
 少し歩き、校舎から出ると、半球状のドームみたいな建物へ。

「ソフィアさん。ここが魔法の実技の授業で使用する訓練場です。制服を用意しておりますので、あちらの更衣室で着替えていただけますか?」
「実技をするのに制服ですか? 運動着とかではなく?」
「この制服は、魔法の糸で編まれているのでら非常に魔法防御力が高いんです。ソフィアさんには無用な心配かもしれませんが、念の為お願いします」

 あ、そういう事?
 じゃあ絶対に着る!
 小学生用かなと思える小さな制服を受け取り……サイズがぴったりなのはどういう事だろうかと思いながらも、水色を基調とした可愛らしい制服に着替えた。