クローズイベントの夜/その1
アキラ


ここ、マッドハウスが閉鎖する

いよいよ

存続期間は4年余りらしい

何という短さだ

しかし、なぜかロックの殿堂に化けた

西の博多めんたいに対峙する東の聖地

更にここはプロへの登竜門にもなった

わずかの期間で

だからプロを目指すアマのバンドはここに集まる

その間、常に専属バンド「ロード・ローラーズ」がいた

オレはその最後のメンバーになった

今夜はクローズドのイベントだった

ステージには歴代のメンバーが結集した

ほとんど、プロデビューしている

オレのギターの先生、赤子さんも

...


赤子さんは絵に描いた男のような女性だ

猛女と言っていい

その赤子さんがプロの道に誘ってくれた

マッドハウス以外のステージ踏んでないオレを

しっかりとお膳立てをしてくれた上で

だが、条件があった

他のメンバー4人は外し、オレだけということ

4人はプロになる目的だけでここいる

オレも知ってるし、当然赤子さんも

...

5人まとめての話も来た

ロック界の大御所の口利きだ

大御所のプロへの勧誘話はオーナー経由だ

必ずオーナーの建田さんを通させる

たぶんブッキング名目でお金が渡るのだろう

実は赤子さんも大御所に引っ張られた

とにかく、今のメンバー4人は必死だ

で、赤子さんの話を断るようオレに迫った

なぜなら、オレが含まれることが条件だったからだ

...


大御所は以前にもオレを誘ってくれたことがある

その時は建田さんが許可しなかった

当時、オレには重要な役目が与えられてた

一言でいえば地上げ交渉

もっと言えば最後の地権者の説得

もっとも、オレのスタンスはいつもと同じだった

要は言いつけられる雑用をこなしてた

たまたまというか、ひょんなきっかけからだった

中年女性のその地主が家に入れてくれた

接触自体至難だったらしいが、局面が変わった

それで、オーナーはオレを離さなかった

...

しかし、今回切り出したのはオーナーの方らしい

ここが”役目”を終えてクローズすればオレは用済みだ

5人まとめてにしたのも、赤子さんの条件を意識してだろう

他のメンバーの思惑でオレを取り込めると

結局、オレは建田さんの話に合意した

赤子さんには今日、会ったらぶっ飛ばされると思った

でも、さらりと嫌味を言われただけだった

赤子さん、せっかくの好意、すいませんでした

それと、今日のジョイントありがとうございました