海への誘い/その1


「美咲ちゃん、こんちわ」

「あ、薫さん、こんにちわ。さっき電話あって、お姉ちゃん少し遅れるって」

ケイコの中学時代の同級生、薫と絵美がやってきた。

美咲はケイコの妹だ。

「そう。再来週の土日に海に行くから、おけいも誘おうと思ってさ。ここで待ってていい?」

「うん、待ってて。じきに帰ってくると思うから。こら、ジョン、こっちに来なさい」

「わん!わん!」

横田家の愛犬ジョンが、庭先に立っている絵美に寄って行った。

「ジョン、よしよし。・・・、美咲ちゃん、犬好きだねー」

美咲は笑顔でうなずいた。




「まあ。二人とも、久しぶり。元気?」

ケイコの母、美沙が洗濯物をしまいに庭に出てきた。

頭をチョンと下げて挨拶する二人の前を歩いて、物干しに向かっていく。

「海に誘ってくれるんだって、お姉ちゃんを」

「そう、連れってってやってねー。やっぱり、中学の時のお友達はいいわねぇ」

美沙は物干しのワイシャツを取り込みながら、娘の旧友にさりげなく、そう話しかけた。




ほどなく、道路側に向いて手を動かしている美沙は、ふと、家の前を通過する高級車に目をやった。

美沙はとっさに、その車にケイコが乗っていることが分かったらしい。

案の定、少しして、ケイコが帰宅してきた。