ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪

猛る狂気/その2
アキラ




「さあ、日が暮れるまでに一気だぞ!明日から天気は荒れ模様だ。今日いっぱいで仕上げる、いいな!」

昼食を終えた植木職人が戻ってきた

オレは、ケイコちゃんが持ち出したあと、”元”に戻した植木ばさみを注視した

「あれ?こんなふうにおいてたかな…。向きが逆なような…」

「おい、おめえ、眠気さしてんのか!シャキッと行けって!」

「はい、親方!」

若い職人さんは、”凶器”となる運命から逃れたハサミを、”やっと”手にしてくれた


...




その数秒後、ケイコちゃんの口からようやく言葉が出た

「アキラ…、あのハサミ、私を許してくれたの?」

「ああ、そうだね。あのハサミは血を見るのは嫌だったんだ。ケイコちゃんに血を出させることもね…」

「でも、ギリギリだったんだよ、アキラ。あなたを刺さなかった私、咄嗟の判断で、違う私だったよ。いいの、そんなんでも…」

「ケイコちゃん、いつもギリギリで踏ん張ってて疲れたろう。誰にでもできることじゃない、それって」

「ハア、ハア、ハア…」

ケイコちゃん、急に動悸が激しくなった

「おい、大丈夫か?しっかり!」

「うん…、大丈夫だよ、アキラ…」

ケイコちゃんは体の全体重をオレにかぶせてきた

この子の寄りかかる肉感は、何かを語り掛けてきてるようだ

それは独り言のように…

何語かはわからない、その言葉らしきメッセージは二人だけの言語で伝わった

そして…


...



オレはケイコちゃんの息が整ったのを見計らい、言葉をかけた

「おそくなったけど、ランチどうだ?」

「アキラ…、私、もう待ちきれないよ…。待ちわびた」

「…」

「待ちすぎて、気が変になってるって、半分。だから…」

「なら、ランチ抜きで行くか…」

「そうしたい。どこでもいいから…」

「わかった、行こう」


...



オレはバイクにケイ子ちゃんを乗せ、病院を出た

全く気のせいだと思うが、バイクを走らせた瞬間の感覚…

まるで人形を乗せてるようだった

人形なんかでたまるか!

戻してやるって…

あの”夜の海”で初めて会った時に!