ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪

果実たちの選択/その17
アキラ



麻衣はしばらく黙っていたが、少し苦笑いしてから話し始めた

「アンタには参ったわ。今回は返す言葉ないわよ。お母さんには申し訳ないと思ってるし、これは心の底からね。さんざん苦労してきた母親を、泣かせたくはないわ。私だってそういう気持ちはあるのよ、さすがに」

ここで、麻衣は軽く深呼吸して、少し下を向いて言った

「アキラの気持ちは、心してもらっとく。でも、約束はできなし、しない。ウソは言いたくないしね。これが精いっぱいよ。いい、これで?」

麻衣は言い終わる前に、再びオレの顔を見つめていた

「ああ、そんなところだろうよ。けど、今の気持ち本当なら、これまでまでみたいなこと、できないはずだ。…なら、終わりにしよう、これで。元気でな」

そして、目にハンカチをあてているお母さんにも、一言かけた

「お母さん、すいません。オレにはここまでです」

麻衣のお母さんは、ゆっくり頷きながら、お辞儀してくれた

オレが病室の少し開いていたドアに手を伸ばすと、麻衣が声をかけてきた

「さよなら。アンタもおけいをこれ以上、泣かせちゃダメよ」

麻衣のヤツは、最後も憎まれ口を忘れなかった

お前と切れりゃ、もう泣くことはないさ…

オレは胸の内でそう呟いたが、口には出さなかった


...



病室を出ると、ちょうど昼食時で、食事の運搬で慌ただしい

そうだ、早速、剣崎さんに電話しとこう

こうなれば、ケイコちゃんには一時も早く会いたいよ

オレは、その階の公衆電話から、ヒールズに電話した

あいにく剣崎さんは不在だったので、あらかじめ取決めていた連絡方法で対処した

さあ…、こらからが大変だ

いずれにしても、ケイコちゃんと会ってだ、その上でだ…

まずはちゃんと謝って、これまでの説明をして、そして、彼女の気持ちをしっかり受けとめる

ああ…、急に会いたい気持ちが高まって来ちゃった


...



昼時の人が行きかう病院を出ると、そのままバイクに向かった

バイクにまたがったあと、ヘルメットをかぶろうとしたその時だった

”ドン!”と、いきなり何かがバイクに落っこちてきたような衝撃だった

気が付くと、オレの胴に人の手が巻き付いてる

思わず、触れるより先に、”その手”に目をやった

その両手には、大きいはさみとお守りが、それぞれ握られていた

ケイコちゃん…

オレがその手に触れると、ギュッと、強く締め付けてきた

「わー!わー!アキラー、わー!」

ダミ声に近い大きい声で、ケイコちゃんは泣き叫んだ

震えてる…

オレの触れている彼女の手からは、バイブレーターのように振動が伝わってきた

オレは彼女の両手をゆっくりほどき、バイクから降りて、ケイコちゃんの肩に手をやった

「わー!アキラー、私、アキラ殺そうとしちゃったよー、わー!わー!」