ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪

果実たちの選択/その16
ケイコ



やっと病院の外までたどり着いた

入ってくるときの私を見た人は、今の私、別人に見えるだろう

ちょうど正午の時報が鳴ってる

ほぼ無意識で、バイク置き場へ足は動いていた

「おお、じゃあ、昼にしようや。今日はどこ行くか…」

植木職人さんたちの、”日常”会話が耳に届く

あの人たちは、昨日と変わらないお昼なんだ、今

私はね、違うんだ…

今、”日常”の時間じゃないんだよ

そんな訳不明な呟きを頭の中で唱えながら、アキラのバイクを探してた

見当たらないや…

私はバイク置き場の壁に背中をもたれた

それで、そのまま地面にへたれこんじゃったよ


...



頭の中は確かに混乱していた

麻衣への怒りと憎しみの感情は、しぼんではいない

しかし、アキラに対しても、憤りの気持ちが湧き上がっていた

私は放心状態ではあったが、一方で、ものすごくたくさんのことを、同時に考えていた

アキラに裏切られたと思えば、腹が立つ

アキラに迷惑かけたことを思い起こせば、申し訳ない気持ちになる

アキラのこと、もう忘れようと考えれば、淋しい

さっきの病室のこと、頭に浮かべば悔しくて仕方がない

アキラが今まで私に接してくれたことを振り返れば、嬉しいし、なんか懐かしい気もする

もう、どうでもいいや…

そんなところに、どうしても行着く

そんなんじゃダメだ、落ち着いて、気持ちを整理して…

でも、それは、すぐ萎えちゃうんだ


...



ボーっとしてる私の目に、昼の陽射しを照り返す、眩しい光が入ってきた

反射的に目をつぶった後、そこに目をやると、植木ばさみがあった

植木職人が昼食で離れる際、片付け忘れたのだろう

はは、立派な刃物じゃん、あれ

やってやるか、あれで…

いっそ一突きで、きれいさっぱりだ

悪魔の囁きだよな、これって

私、こんなこと考えてるんだ、今

冷静にならなきゃって気持ちはある

だけど、ぶっ刺してやる、アキラを…

この感情は確かにあるみたいだ…、どうしよう…

衝動的に、私は恐る恐る、その”凶器”を手にしてた

私、最低だ、人間のクズだよ

私は恐くなって、思わず周りを見回した

すると、視界に黒いヘルメットが横切った

アキラだ!


...



アキラは、玄関脇を私と反対方向に歩いて行く

向かう方向にはバイクが止めてあった

気が付かなかった…

植木の作業でここ狭くなってるから、あそこに止めたんだ、アキラ…

さあ…、どうするんだよ?私!

私は、心と頭で自問自答を繰り返した

アキラがバイクにまたがった

それが目に入った瞬間、私はアキラの背中に向かって走っていった