果実たちの選択/その15
ケイコ
相模浦中央病院の最寄バス停に着くと、私は全力で走った
しかし、部活で校庭を走ってる時のような、爽快さなんて全くない
怒りと憎しみが全身に充満してるようで、気分は最悪だ
走ることおよそ5分、麻衣の”ご滞在先”に着いた
ハア、ハア、ハア…
病院正面に立ちすくみ、ひと通り見回してみた
初めて来た病院だが、聞いてる通り、きれいで新しい
入口付近のバイク置き場脇では、植栽の手入れで、何人も職人が目につく
さあ、行くぞ…
私は、3階の個室に麻衣が入院していることを確認した
そして、エレベーターの前へ…
待ってる間、息を整えながら、ハンカチで汗を拭い取った
そして、頭の中では、麻衣との”今まで”が走馬灯状態だったよ
さんざん好き放題やりやがって!
全部、あの女のせいだ、クソー!
思い出すほどに、怒りが沸々と込み上げてくる
...
エレベーター内は、私一人だけだった
あっという間に3階へ運ばれた私は、再度、額の汗を拭った
麻衣の部屋が視界に入ったところで、いったん立ち止まり、一度、大きく深呼吸した
そして、そのままゆっくりと、部屋の前へと歩いて行った
入口のドアは少し開いていた
中からは人の話し声が聞こえる
どうやら、誰か面会に来ているようだ…
何気なく、ドアの間から遠目に覗いてみた
ベッドの上には麻衣がいるが、体しか見えない
その手前に、一見で母親とわかる女性の他に、男の人が立っている
その男性、後姿だったが、すぐに見覚えのある人だって自覚した
いや、ちがう、そんなはずないと、反射的に自分に言い聞かした
しかし、無駄だった
話をしてる声も、私の良く知ってる人のそれに間違いなかった
アキラ!
なんでいるのよ、ここに…
...
冗談、やめてよ…
さっきまで火照っていた私の両足からは、一気に血の気が引いてくのがわかった
ふらつきそうな足取りで、私は病室の前から離れていった
「ありがとうございますね。この子にこんなこと言ってくれる人、誰も… これからもよろしく… 麻衣のこと…」
「お母さん、大丈夫ですよ。コイツ、もう悪さ… でも…」
私が耳にした、麻衣のお母さんらしき人とアキラの会話…
私が目にした、アキラと、泣き声をあげてる麻衣のお母さんらしき人が、手を握ってる光景…
そんなもん、見たくも聞きたくもないんだってば!
麻衣の顔は二人の体で隠れていたが、だいたいは想像つくさ
もうダメだよ、私…
私は鉄製の重いドアを開け、非常階段で階下に降りて行った
コツン、コツン…
窓の光も遮った”密室”には、私の靴音が悲しく響いている
ケイコ
相模浦中央病院の最寄バス停に着くと、私は全力で走った
しかし、部活で校庭を走ってる時のような、爽快さなんて全くない
怒りと憎しみが全身に充満してるようで、気分は最悪だ
走ることおよそ5分、麻衣の”ご滞在先”に着いた
ハア、ハア、ハア…
病院正面に立ちすくみ、ひと通り見回してみた
初めて来た病院だが、聞いてる通り、きれいで新しい
入口付近のバイク置き場脇では、植栽の手入れで、何人も職人が目につく
さあ、行くぞ…
私は、3階の個室に麻衣が入院していることを確認した
そして、エレベーターの前へ…
待ってる間、息を整えながら、ハンカチで汗を拭い取った
そして、頭の中では、麻衣との”今まで”が走馬灯状態だったよ
さんざん好き放題やりやがって!
全部、あの女のせいだ、クソー!
思い出すほどに、怒りが沸々と込み上げてくる
...
エレベーター内は、私一人だけだった
あっという間に3階へ運ばれた私は、再度、額の汗を拭った
麻衣の部屋が視界に入ったところで、いったん立ち止まり、一度、大きく深呼吸した
そして、そのままゆっくりと、部屋の前へと歩いて行った
入口のドアは少し開いていた
中からは人の話し声が聞こえる
どうやら、誰か面会に来ているようだ…
何気なく、ドアの間から遠目に覗いてみた
ベッドの上には麻衣がいるが、体しか見えない
その手前に、一見で母親とわかる女性の他に、男の人が立っている
その男性、後姿だったが、すぐに見覚えのある人だって自覚した
いや、ちがう、そんなはずないと、反射的に自分に言い聞かした
しかし、無駄だった
話をしてる声も、私の良く知ってる人のそれに間違いなかった
アキラ!
なんでいるのよ、ここに…
...
冗談、やめてよ…
さっきまで火照っていた私の両足からは、一気に血の気が引いてくのがわかった
ふらつきそうな足取りで、私は病室の前から離れていった
「ありがとうございますね。この子にこんなこと言ってくれる人、誰も… これからもよろしく… 麻衣のこと…」
「お母さん、大丈夫ですよ。コイツ、もう悪さ… でも…」
私が耳にした、麻衣のお母さんらしき人とアキラの会話…
私が目にした、アキラと、泣き声をあげてる麻衣のお母さんらしき人が、手を握ってる光景…
そんなもん、見たくも聞きたくもないんだってば!
麻衣の顔は二人の体で隠れていたが、だいたいは想像つくさ
もうダメだよ、私…
私は鉄製の重いドアを開け、非常階段で階下に降りて行った
コツン、コツン…
窓の光も遮った”密室”には、私の靴音が悲しく響いている



