ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪

果実たちの選択/その10
ケイコ


陸上部の顧問で担任でもある志田先生は、私の前で立止まった

「横田…、ちょっと、こっち来てくれるか」

先生はそう言って、校門の塀の陰まで私の手を引いた

「ああ、先生…、あの私…」

「うん、横田、久しぶりだな。あのな、まずいんだ、こういうの。今校舎内じゃ、お前に気づいて騒ぎになってる。教育委員会との申しあわせもあるし…」

私の正面で両肩に手を当てながら、先生は慌てた口調だった

「悪いが、今日は帰れ。しばらくは我慢して、こっちからの連絡待ってろ。な、横田…」

「はい。すいません。すぐ帰ります。先生、私どうしても学校の空気吸いたくて…、それで私…」

「いいんだ。お前の気持ちは分かってる。学校もな、いろいろ対応しててな…。まだはっきりしないが、何とか早くな…、だから…」

私は涙を流しながら、無言で頭を下げた

そして、学校を背にして走った

背中にはみんなの声、まだ届いてるのに


...



校門を前にして、みんなのところには近づけない…

それって、こんなに寂しいことなのか

つらい、これ、本当につらい

現実とは、こういうことなんだろうと、思い知らされた

でも…、”この時”の涙はすぐ止まった


...



今日はもう、帰ろう、家に…

”通い”なれた、最寄りのバス停に着くと、待ってる人は誰もいなかった

ここでも一人ぼっちだ…

もう私は、マイナスモードにズッポリだった

バスが来るまでは約20分あった

5分ほどすると、バスを待つ私の前に、1台の車が止まった

「よう!おけい、戻ってたのか、アンタ」

助手席の窓から、そう声をかけてきたのは久美だった…