ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪

オリジナル原稿版/相馬豹一葬儀シーン~麻衣とケイコの対峙とその真実/その11
剣崎



「おお、これは、剣崎さん…。この度は相馬さんがお気の毒なことで…」

その時、明らかに業界参列者と見える大柄の男から声をかけられた

関西直系で広島の大物組長である五島長さんだ…

どうやら焼香は済ませてくれた後で、この後所要で即帰路に着くということだった

俺が丁重に挨拶を済ませると、五島親分は改まって問いかけてきたよ

...


「…あの親族席に座ってらっしゃる若いお嬢さんが、例の相馬さんの遠縁という方でっか?」

「ええ…、その一人です。もう一人は一般参列に回っていますが…」

「やっぱりでんな。いやあ、他の業界仲間も言っとったが、目えなんか、相馬さんにそっくりや。さすが、血は争えんもんですな。もうお一人も、さぞ獣のような眼光で、一目合わせればすぐわかるんでっしゃろうなあ…」

ちょうどその時、何とこの親分の10メートル後ろには、焼香を終えたケイコが俺のもとに戻ってきていた

五島さんはここで話を切り上げ、急ぎ足で葬儀会場出口に向かって行く際、当のもう一人、ケイコとすれ違った…

しかしながら五島親分は見向きもせず、まさかこの子がその”もう一人”だとは全く気付かなかったようだわ(苦笑)

ふふ…、まあ、こんなところなんだろう…

...


だが俺は、改めて、麻衣とケイコへの”業界関係者の視点”というものを実感させられた

俺が二人を同等と捉えてようが、俺たちを取り巻くやくざモンの眼からは、ケイコなんか、どう見ても相馬豹一の血筋とは無縁の娘だよ

だが、”肩書”は麻衣と一緒なんだ

その二人を相馬さんの意思がこうして自分の葬儀の場ではっきり区別させた結果は、早くも一目瞭然だった

はは…、あの人にはこの光景も、あらかじめ予測できていたんだろうな

えっ…?

そうか…、もしや…‼

この時、俺はふとひらめいた

いや、もうひとつの眼で取り込んだ光景を読み切れたんだ!