ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪

終われない夏の日/その16
ケイコ




私は受話器の”向こう側”に向かって、矢継ぎ早に聞いた

「いつ戻るんですか?明日ですか?すぐ会えます?」

「ハハハ、ケイコ、そう急くなよ。まあ、今週中にはだ。それで、お前、彼の電話番号とかアパートの住所、聞いてないんだったな?」

「ええ、大阪が終わるまで、我慢しなきゃと思ってたから。聞いちゃえば連絡したくなっちゃうし。今は聞かなかったこと、後悔してますけど」

「ああ、そういうやせ我慢、これからはしない方がいい。近頃のお前の年代の奴は、みんな、我欲には従順だぞ。いや、むき出しだな。それに比べて、お前らは…」

「わかってますよ。じゃあ、アキラの連絡先とか、早く教えてください」

「ああ」

剣崎さんは苦笑いしながら、その場でソレ、教えてくれた


...


私には、たった今メモした手元の彼の住所・電話番号が、宝物の地図に見えた

「それで、アキラのとこには、いつ行けばいいのかな?」

たぶん、この言葉を口にした時、私、頬が微妙に崩れていたと思う

それは何とも言えない、心地よいときめきなのだろう…

まるで、誕生日のプレゼントを受取りに行く約束、取り付けてるみたいな気分だったから

「彼が出てきたら、まず俺が会ってこよう。その上でセットするよ、俺がな。ヤツもいろいろ未知の体験だったろうし。建田さんのとことか、それなりに事前説明することもあるしな、俺の口から。そうなりゃ、ヤツの性格だ、心の整理も必要だろうし。お前とは、その辺スッキリさせてから会わせたい」

私は間をおかず、言った

「ここまできたら、あなたの考えを信じますよ。でも、もうアキラを利用するようなこと、絶対しないで。いいですか?」

「ああ、お前ら二人をこれ以上傷つけることは、何があっても避けたい。これは本心だ。だから、二人もそのつもりで生きていけるな?これからは…」

「当然ですよ、そっちこそ、もう私たちに近づかないで。誓えますか、剣崎さん?」

「ああ、俺は誓える。お前らが今までのこと、”蒸し返さなければ”だ、それは心しとけよ。当面、麻衣への接触はそれにつながるからな、いいな?」

「今更、麻衣のことなんか口にしないで!アイツのことは、アキラの記憶から消してやるつもりなんだから」

「うん、ならいい。今後、二日おきにそこの店にメッセージをおく。なるべくまめにチェックしておけ。ケイコ…、じゃあ、オレとの”直”のハナシは、”たぶん”、これで最後になるだろう。元気でな」

「ええ、さよなら、剣崎さん」

最後はあっけなかったが、後味は悪くなかった

本当は、”お世話になりました”とかって、言いたい気持ちもあった

でも、アキラにした仕打ち考えると、抵抗がある、やっぱり…



...



「レオ」を出たあと、駅前でバスを待っていると、明らかに南玉連合の”走り”と見られる単車が6台、轟音上げて、まさに我が物顔で暴走していった

道行く人は皆怪訝な顔つきで、”近頃のガキは思い上がってる、やりたい放題だ…”と、言わんばかりだ

ごめん…、紅子さん、亜咲さん

二人の期待裏切っちゃったよ、私