ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪

終われない夏の日/その15
ケイコ



淡いイエローの封筒の中身は、チラシが1枚だけだった

”日ごろのご愛顧を込めて、特別キャンペーンのご案内”

キャッチコピーはごくありふれた、DMのそれだ

さらに、サブキャッチで”この地区限定!日時限定のお得なご案内…!”とある

私は、その下の文章に目を通した

うん…、なるほどだった

まず、該当時間内に指定の”提携場所”に行き、そこからここに書かれている電話番号へ連絡する

電話がつながったら、こっちの会員コード4ケタを告げ、向こうからの連絡を待つ

10分以内に”提携場所”の公衆電話に私宛、折り返し電話がかかってくる

そして、”お得な情報”が聞けるという趣旨だった


...



私は、一読してすぐに”すべて”を理解した

”提携場所”はS駅西口の喫茶店「レオ」、会員コードは「4284」に間違いない

「レオ」は剣崎さんとの打合せで使っていた店で、「4284」は、この前まで相和会で借りててくれた、私の部屋の電話番号下4桁だ

今までもそうだったが、何かの折に使うシグナルを、私は承知していたから…

要は、剣崎さんと接触するための、ナビゲートということになる

私が出頭する前、車の中で剣崎さんと散々言い合いしたあの時も、それらしい伏線はこちらに投げかけてきたし…

で、指定時間は今日と明日の午後2時から3時までの間か…

なら、今日行くさ、まだ11時前だし十分間に合う

さて、”お得な情報”とやらは一体、何かな…

でも、やっぱり…

アキラ…、彼とようやく会える段取りが聞けるかも知れない

咄嗟に頭に浮かんだのは、これだった



...



レオに着いたのは、1時半過ぎ

既に昼のランチ時が終わり、いつも座る窓側の席が空いていた

2時ジャスト、店の公衆電話から指定の電話番号にダイヤルした

この番号、見なくてもわかるよ、いつも電話してたもん

剣崎さんの店、ヒールズの奥の部屋につながる電話番号だ

「はい、ヒールズです。どちら様でしょうか」

電話口の声は、感じの良い、若い男性だった

「あの、キャンペーンのチラシ届いたんで、”指定場所”から連絡してるんですけど。横田です」

「横田さんですね?恐れ入りますが、会員コードをお願いします」

「4284です」

「はい、ありがとうございます。10分以内に、この電話へこちらからかけ直します。しばらく、そちらで待っててもらいますか?」

「はい」

電話を切り、席に戻った私は”先方”からの連絡を待った


...



窓の外を眺めながら待ってる間、気分は明るかった

剣崎さんと話す前は、いつも気が重かったんだけど、今日は今までと違った

おそらく、少なからず期待感を持っていたんだろう…

そして、およそ5、6分して店の女性が、6分入り程度の店内に向かって声を発した

「お客様で横田様、いらっしゃいますか?」

「はい、私です!」

こう言いながら、私は早足でレジ横の女性店員の前に向かった

「横田様、お電話が入っておりますので、どうそ」

「あっ、ありがとうございます」

私は、店員さんがこの場から離れた後、受話器を握った

「もしもし…」

「ケイコか?」

「はい」

「剣崎だ。おかえり、ケイコ。体の方は大丈夫か?」

「ええ、大丈夫ですよ」

「そうか。じゃあ、早速用件だ。間もなく彼、戻れそうだ」

いきなりだった

アキラが戻ってくる…‼︎