終われない夏の日/その2
ケイコとアキラ



ケイコが警察の取調べを受けていることは、アキラも聞かされた

頭の中では理解できてはいたが、実際そうなってみると、やはり事態の深刻さを改めて実感した

あの子の”疵”はできるだけ浅く済ませなくては…、との思いからの決断だった

しかし考えてみれば、高校生の女の子に、警察で真実と違うことを話させている…

かえって、彼女を”汚して”しまったことになるのではないだろうか

今になって、こんな疑念がアキラの頭を覆い尽くした

すると背中には、服に浸み込むほどの脂汗がどっと涌いてきた

顔にも脂汗は滴り落ち、目に前に座っている刑事が思わず聴取を中断するほどだった

もっと違った決断はなかったものか…、これは何度も何度も考えを巡らせたことだ

その上での、苦渋の決断だったはずだ

だけど…、それは自分が犠牲になれば、それでいいという身勝手な思い込みだったのではないかというところに行き着いてしまい、アキラは今さらながら、底なしの自己嫌悪に陥っていた


...



ケイコとアキラは、このひと夏の決断をポジティブに捉えることの苦しさを繰り返し味わっていた

ひょっとしてこの苦しみは、エンドレスに続いていくのではないのか…

今回の件はこれで解決したとしても、それは表面上だけじゃないのかと

こんな救いようない不安を、二人は心のどこかに抱いていたのだ

ケイコとアキラ…、”同じ屋根の下”に二人が共にいるのは、あの大阪行きの前日、ケイコのアパートで会って以来だった

しかし、ここは二人が会うことはかなわない、警察の中であった