発熱の代償/その2
ケイコ
冷夏と言われた今年の夏も終わりに近づいて、ここのとこは残暑が厳しい
そんな中、2学期がスタートした
自分の勝手で、長期休部中だった私は今日、陸上部に戻れた
今、ハードルを飛ぶ一瞬に全身が痺れてる
なまった体のせいか、感激したせいか、どっちなのか
そんなのどうでもいいやって、ハードルを何度も何度も目の前にした
炎天下、さすがに気が付いたら、ぐったりで…
皆はまだ練習中だが、部室に退散して、いすを並べて横になってた
だれてるわ…、こんな自分、情けない…
...
部に復帰できた喜びは、体中で実感してる
でも、一方で不安が頭の上からまるで岩のように、圧し掛かってくる
ああ、アキラに会いたい、会いたいよう…
愚痴でも無駄話でも、何でもいいからアキラの顔見て、一時を共にしたい
みんな夢中で汗かいてるのに、私はこんなザマだ
いつまでも寝てちゃダメだ、起きなきゃ…
...
「おけい、大丈夫?ああ、無理しちゃダメだって、寝てなよー」
同級の主将、桑原里美子が、私の様子を見に入ってきた
「リミ、悪い。せっかく戻してくれたのに、バテバテで。今、グランドに戻るからさ…」
私がフラつきながら立ち上がると、リミは私の体をとっさに支えてくれた
「とにかく、もう少し休んでなよ。だいたい、ブランクあんのに飛ばしすぎだって。今日、特に暑いしさ…。でも、おけいらしいよな、手抜き一切なしで…。ハハハ…」
「面目ない。後輩にもみっともなくて会わせる顔ないよ…、ヘヘへ…」
私は椅子の背にもたれながら、頭をかいた
「何言ってんだよ。後輩はあなたが戻って、大喜びだよ。というか、おけいは部がどうのこうのっていうか、一年からしたら憧れの的だからね。嬉しくてしょうがないんだよ、一緒の場にいるだけで、実際さ…」
「からかうなよ、リミ。でも、みんな短い間で上達するもんだな…、私、何やっても、今じゃビリッケツだわ」
「それ以前だよ、おけいの存在はさ。南玉連合でトップやってて、いくつもの学校のもめごとや相談、すべて、解決してさ、すごいよ。人のために、いつも走り回って…。誰も真似できない、みんな、そう思ってるよ」
「リミ、やめてくれ。私、そんなご立派じゃないんだ、ホントは私…」
「…、南玉とか、詳しいこと知らないけど、まあ、私の耳にも入ってくるよ、やっぱり。いろいろなんだろ?あなた…。でも、信じて欲しいんだけど、あなたはみんなに、尊敬されてんだよ。私もだ、なにがあっても。だからさ、仮に短い間でも、一緒に汗かこうよ、なっ…」
ひょっとしたら、みんなは知ってるのか…?、私の事情もろもろを
おそらく、薄々ってとこだろうけど
「ありがとう。じゃあ、もう少し、横になってるわ」
「ああ、こっち終わったら、また来るから。ゆっくりしてて」
リミが出て行ったあとの部室は、さっきまで耳に届いていた外のざわめきが、急に遮断された気がした
そこには、自分一人、永遠に取り残されたような疎外感でいっぱいだった
ケイコ
冷夏と言われた今年の夏も終わりに近づいて、ここのとこは残暑が厳しい
そんな中、2学期がスタートした
自分の勝手で、長期休部中だった私は今日、陸上部に戻れた
今、ハードルを飛ぶ一瞬に全身が痺れてる
なまった体のせいか、感激したせいか、どっちなのか
そんなのどうでもいいやって、ハードルを何度も何度も目の前にした
炎天下、さすがに気が付いたら、ぐったりで…
皆はまだ練習中だが、部室に退散して、いすを並べて横になってた
だれてるわ…、こんな自分、情けない…
...
部に復帰できた喜びは、体中で実感してる
でも、一方で不安が頭の上からまるで岩のように、圧し掛かってくる
ああ、アキラに会いたい、会いたいよう…
愚痴でも無駄話でも、何でもいいからアキラの顔見て、一時を共にしたい
みんな夢中で汗かいてるのに、私はこんなザマだ
いつまでも寝てちゃダメだ、起きなきゃ…
...
「おけい、大丈夫?ああ、無理しちゃダメだって、寝てなよー」
同級の主将、桑原里美子が、私の様子を見に入ってきた
「リミ、悪い。せっかく戻してくれたのに、バテバテで。今、グランドに戻るからさ…」
私がフラつきながら立ち上がると、リミは私の体をとっさに支えてくれた
「とにかく、もう少し休んでなよ。だいたい、ブランクあんのに飛ばしすぎだって。今日、特に暑いしさ…。でも、おけいらしいよな、手抜き一切なしで…。ハハハ…」
「面目ない。後輩にもみっともなくて会わせる顔ないよ…、ヘヘへ…」
私は椅子の背にもたれながら、頭をかいた
「何言ってんだよ。後輩はあなたが戻って、大喜びだよ。というか、おけいは部がどうのこうのっていうか、一年からしたら憧れの的だからね。嬉しくてしょうがないんだよ、一緒の場にいるだけで、実際さ…」
「からかうなよ、リミ。でも、みんな短い間で上達するもんだな…、私、何やっても、今じゃビリッケツだわ」
「それ以前だよ、おけいの存在はさ。南玉連合でトップやってて、いくつもの学校のもめごとや相談、すべて、解決してさ、すごいよ。人のために、いつも走り回って…。誰も真似できない、みんな、そう思ってるよ」
「リミ、やめてくれ。私、そんなご立派じゃないんだ、ホントは私…」
「…、南玉とか、詳しいこと知らないけど、まあ、私の耳にも入ってくるよ、やっぱり。いろいろなんだろ?あなた…。でも、信じて欲しいんだけど、あなたはみんなに、尊敬されてんだよ。私もだ、なにがあっても。だからさ、仮に短い間でも、一緒に汗かこうよ、なっ…」
ひょっとしたら、みんなは知ってるのか…?、私の事情もろもろを
おそらく、薄々ってとこだろうけど
「ありがとう。じゃあ、もう少し、横になってるわ」
「ああ、こっち終わったら、また来るから。ゆっくりしてて」
リミが出て行ったあとの部室は、さっきまで耳に届いていた外のざわめきが、急に遮断された気がした
そこには、自分一人、永遠に取り残されたような疎外感でいっぱいだった



