ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪

シナリオ&カラクリ/その15
剣崎



「君の今までを考えると、建田さんに関してはいろいろ思いがあるだろうから、黙秘がいいだろう。とにかく、さっき読んだ内容以外、余分なことは話すな。くどいようだが、守れるな?」

俺は明の目を見つめながら、念押しした

「大丈夫です」

それは、”確信”が掴めた返事だった

しばらく間をおいて、今度は明から話してきた

「それで、ケイコのことなんですけど…。あの子、症状、どうやら大丈夫そうだし、どうなんですかね。この件、ケイコは別にそのままでも…。俺と麻衣で決着できませんか?そうすれば、彼女、学校とか家の人ともそのままで…。その辺は可能じゃないんですか?」

明から穏やかな口調で、”注文”がきた

これはある程度、想定してたことだ

「こっちは、あの錠剤の件を完全に抹消する必要があるんだ。俺の上の意思も働いてるしな。悪いが、ケイコがそのままという訳にはいかない。後で再燃ってことを、一番避けたいんでね。まあ、サツに呼ばれて、そこで反応出なきゃ、それでしまいだ。こっちはそれ以上のとやかくはないさ」

「そうですか。なら、承知しますよ」

すんなりだった…、俺は更に問いただした

「他に懸念することがあれば、この際だ、言ってくれ」


...



明は少し考えを巡らせているようだったが、口を開いた

「あの…、この件すべて終わって、オレ達もう完全に自由になれるんですよね?はっきり言って、口約束だけなんで。その辺…。監視とかはもうやだし、一応、安心したいんです」

この青年からは、こういった”念入れ”はないと思っていたが…

「ここは俺を信じてもらう以外ないが、まあ、こっちは損得にかなわない”こと”はしない、いや、むしろできない。組織があることだからな。それは分かるよな?」

「ええ、そうでしょうね」

「そっちがこっちに、”脅威”になるような事態起こさない限り、それはない。お互いが抑止力になってる。命がけのな。それが保証にあたる。そうだよな?」

俺はこの手の受け答えは慣れてるが、こういったタイプの相手はレアだ

「そうなりますよね、やっぱり。わかりました。でも、それ、オレとケイコだけじゃなくて、麻衣も含んでるって解釈していいですか?」

これは想定外だった


...



「まず聞くが、麻衣は君をさんざん苦しめた女だ。憎いんじゃないのか?そいつがどうなろうと、関係ないんじゃないのか?普通に考えれば」

「ええ、でも麻衣とはさっき、決着ついたんで。別に体の関係とかはないです。違いますが、終わったんです、もう。だから、麻衣も”大丈夫”って思ってて、いいですかね?」

正直、麻衣の”身の保証”にまでこいつが言及してくるとは、意外だった

「麻衣も同様だよ。ヤツが余計な動きに出なきゃ、何もない。当然だろ?」

「はは、そりゃそうですよね。麻衣は病院でクスリ抜くって決意したんだし。自分で考えたシナリオ通り運べば、それ以上は意味ないですよね」

明は麻衣のことをまだわかってないのか、それで納得したようだ

麻衣はこのシナリオに、まだ”タマ”を仕込んでるんだよ…

いずれにしても、こいつの話は矢島さんには伝えられない

やはり、ここへは俺が来てよかった


...



ケイコに対して自己犠牲を払うのは、愛する相手だからと軽く受け取っていた

だが、あそこまで痛い目に遭わされた、麻衣まで気遣ってやがる

なるほど、香月明も損得勘定の計算だけじゃ、見誤るって訳か…

このガキども…、どいつもこいつも、頭を悩ませてくれる