シナリオ&カラクリ/その15
剣崎
「君の今までを考えると、建田さんに関してはいろいろ思いがあるだろうから、黙秘がいいだろう。とにかく、さっき読んだ内容以外、余分なことは話すな。くどいようだが、守れるな?」
俺は明の目を見つめながら、念押しした
「大丈夫です」
それは、”確信”が掴めた返事だった
しばらく間をおいて、今度は明から話してきた
「それで、ケイコのことなんですけど…。あの子、症状、どうやら大丈夫そうだし、どうなんですかね。この件、ケイコは別にそのままでも…。俺と麻衣で決着できませんか?そうすれば、彼女、学校とか家の人ともそのままで…。その辺は可能じゃないんですか?」
明から穏やかな口調で、”注文”がきた
これはある程度、想定してたことだ
「こっちは、あの錠剤の件を完全に抹消する必要があるんだ。俺の上の意思も働いてるしな。悪いが、ケイコがそのままという訳にはいかない。後で再燃ってことを、一番避けたいんでね。まあ、サツに呼ばれて、そこで反応出なきゃ、それでしまいだ。こっちはそれ以上のとやかくはないさ」
「そうですか。なら、承知しますよ」
すんなりだった…、俺は更に問いただした
「他に懸念することがあれば、この際だ、言ってくれ」
...
明は少し考えを巡らせているようだったが、口を開いた
「あの…、この件すべて終わって、オレ達もう完全に自由になれるんですよね?はっきり言って、口約束だけなんで。その辺…。監視とかはもうやだし、一応、安心したいんです」
この青年からは、こういった”念入れ”はないと思っていたが…
「ここは俺を信じてもらう以外ないが、まあ、こっちは損得にかなわない”こと”はしない、いや、むしろできない。組織があることだからな。それは分かるよな?」
「ええ、そうでしょうね」
「そっちがこっちに、”脅威”になるような事態起こさない限り、それはない。お互いが抑止力になってる。命がけのな。それが保証にあたる。そうだよな?」
俺はこの手の受け答えは慣れてるが、こういったタイプの相手はレアだ
「そうなりますよね、やっぱり。わかりました。でも、それ、オレとケイコだけじゃなくて、麻衣も含んでるって解釈していいですか?」
これは想定外だった
...
「まず聞くが、麻衣は君をさんざん苦しめた女だ。憎いんじゃないのか?そいつがどうなろうと、関係ないんじゃないのか?普通に考えれば」
「ええ、でも麻衣とはさっき、決着ついたんで。別に体の関係とかはないです。違いますが、終わったんです、もう。だから、麻衣も”大丈夫”って思ってて、いいですかね?」
正直、麻衣の”身の保証”にまでこいつが言及してくるとは、意外だった
「麻衣も同様だよ。ヤツが余計な動きに出なきゃ、何もない。当然だろ?」
「はは、そりゃそうですよね。麻衣は病院でクスリ抜くって決意したんだし。自分で考えたシナリオ通り運べば、それ以上は意味ないですよね」
明は麻衣のことをまだわかってないのか、それで納得したようだ
麻衣はこのシナリオに、まだ”タマ”を仕込んでるんだよ…
いずれにしても、こいつの話は矢島さんには伝えられない
やはり、ここへは俺が来てよかった
...
ケイコに対して自己犠牲を払うのは、愛する相手だからと軽く受け取っていた
だが、あそこまで痛い目に遭わされた、麻衣まで気遣ってやがる
なるほど、香月明も損得勘定の計算だけじゃ、見誤るって訳か…
このガキども…、どいつもこいつも、頭を悩ませてくれる
剣崎
「君の今までを考えると、建田さんに関してはいろいろ思いがあるだろうから、黙秘がいいだろう。とにかく、さっき読んだ内容以外、余分なことは話すな。くどいようだが、守れるな?」
俺は明の目を見つめながら、念押しした
「大丈夫です」
それは、”確信”が掴めた返事だった
しばらく間をおいて、今度は明から話してきた
「それで、ケイコのことなんですけど…。あの子、症状、どうやら大丈夫そうだし、どうなんですかね。この件、ケイコは別にそのままでも…。俺と麻衣で決着できませんか?そうすれば、彼女、学校とか家の人ともそのままで…。その辺は可能じゃないんですか?」
明から穏やかな口調で、”注文”がきた
これはある程度、想定してたことだ
「こっちは、あの錠剤の件を完全に抹消する必要があるんだ。俺の上の意思も働いてるしな。悪いが、ケイコがそのままという訳にはいかない。後で再燃ってことを、一番避けたいんでね。まあ、サツに呼ばれて、そこで反応出なきゃ、それでしまいだ。こっちはそれ以上のとやかくはないさ」
「そうですか。なら、承知しますよ」
すんなりだった…、俺は更に問いただした
「他に懸念することがあれば、この際だ、言ってくれ」
...
明は少し考えを巡らせているようだったが、口を開いた
「あの…、この件すべて終わって、オレ達もう完全に自由になれるんですよね?はっきり言って、口約束だけなんで。その辺…。監視とかはもうやだし、一応、安心したいんです」
この青年からは、こういった”念入れ”はないと思っていたが…
「ここは俺を信じてもらう以外ないが、まあ、こっちは損得にかなわない”こと”はしない、いや、むしろできない。組織があることだからな。それは分かるよな?」
「ええ、そうでしょうね」
「そっちがこっちに、”脅威”になるような事態起こさない限り、それはない。お互いが抑止力になってる。命がけのな。それが保証にあたる。そうだよな?」
俺はこの手の受け答えは慣れてるが、こういったタイプの相手はレアだ
「そうなりますよね、やっぱり。わかりました。でも、それ、オレとケイコだけじゃなくて、麻衣も含んでるって解釈していいですか?」
これは想定外だった
...
「まず聞くが、麻衣は君をさんざん苦しめた女だ。憎いんじゃないのか?そいつがどうなろうと、関係ないんじゃないのか?普通に考えれば」
「ええ、でも麻衣とはさっき、決着ついたんで。別に体の関係とかはないです。違いますが、終わったんです、もう。だから、麻衣も”大丈夫”って思ってて、いいですかね?」
正直、麻衣の”身の保証”にまでこいつが言及してくるとは、意外だった
「麻衣も同様だよ。ヤツが余計な動きに出なきゃ、何もない。当然だろ?」
「はは、そりゃそうですよね。麻衣は病院でクスリ抜くって決意したんだし。自分で考えたシナリオ通り運べば、それ以上は意味ないですよね」
明は麻衣のことをまだわかってないのか、それで納得したようだ
麻衣はこのシナリオに、まだ”タマ”を仕込んでるんだよ…
いずれにしても、こいつの話は矢島さんには伝えられない
やはり、ここへは俺が来てよかった
...
ケイコに対して自己犠牲を払うのは、愛する相手だからと軽く受け取っていた
だが、あそこまで痛い目に遭わされた、麻衣まで気遣ってやがる
なるほど、香月明も損得勘定の計算だけじゃ、見誤るって訳か…
このガキども…、どいつもこいつも、頭を悩ませてくれる



