ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪

シナリオ&カラクリ/その14
剣崎



麻衣のアパートへは俺一人でやってきた

ノックをすると、香月明が玄関を開けた

「やあ、 先だってはいろいろと、すまなかったな。これからの件できた。中、いいか?」

「剣崎さん…、ああ、中、どうぞ」

明は、俺が来るとは思っていなかったようだ

「ここへは他の人かと思ってたんで…」

「君には直接話したかったからな。この前の経緯もあるし」


...



俺は早速、話を切り出した

「麻衣は今、警察で取調べを受けてる。傷害事件の"被害者"でだ。勿論、仕掛けたのはヤツの方だが、まあ、あくまできっかけだから、それはどうでもいい。おそらく、もう体の不調を訴えてる頃だろう」

俺はここで、一呼吸置き、煙草に火をつけた

「その後、病院に回されて、例の反応が確認されれば、"本題"になる。麻衣は君経由ということで、頼む。他はこの前伝えた内容に沿ってだが、具体的な受け答えは、このペーパーで確認してほしい」

黙って聞き入っていた明に、用意してきた書面を渡した

それに目を通し終わると、明は「だいたいわかりました」と答えた

「よし。”そいつ”はすまないが、処分させてもらう」

俺はペーパーを受取り、ライターで燃やした


...



「来週中には、自宅に任意で迎えが来ると思う。大丈夫だな?」

「ええ、心構えは出来てますよ」

どうやら、覚悟は固まっているようだ

この青年は見た目はヤワだが、まるで風にそよぐ柳の枝のようだ

難航してた立退き相手を落としたと聞いてんで、どんな奴かと思っていたが…

我々とは対極の人間だが、目の前の風雨をやり過ごす、しなやかさを感じる

そういえば、麻衣は明のことを”フレた”奴とか言っていたな