『麻衣ロード、そのイカレた軌跡』(全9話)以降の概略と本作『ヒート・フルーツ』の初期展開⤵




伝説のファーストレジェンドは昨夏、壮絶な曲折を経て終わった。

新生・南玉連合は、総長・合田荒子の下、各高校勢力と走り部隊に二派分けされ、その各部隊のトップにはそれぞれ横田競子、津波祥子が就任したが、翌年春、荒子が引退した以降は祥子の後を麻衣が就き、龍虎二人による双頭体制がスタートした。

麻衣と競子は南玉連合という女集団の中で、妥協なく激しく熱く対峙…、その緊張感は一触即発ながらも、反面、二人の対立はいい意味での抑止力を組織内にもたらし、そのことこそ、都県境全体のフレームに無風状態を保たせる誘引力になり得ていた。

しかし、麻衣と競子の両トップ体制が敷かれた約4か月後の初夏…、相和会会長相馬豹一の病死目前が周知されると、二人の置かれたスタンスはにわかに変化を迎えるのだった。

早々に相馬との確約通りクスリを辞める決意を固める競子に対し、自らを熱くさせるものを失うという焦燥感から、自己挑発できる”次”に目線が移る麻衣…。

しかし運命の女神は、その相互の思いが、二人の関係を平穏な顛末で終結させる道に導かなかった。

競子にのしかかるクスリを絶つというプレッシャー…、16歳の少女は誰にも相談できない苛立ちと不安はもはや限界値に近づいていた。

そんな中、高2の夏休みが始まった矢先…、中学時代の親友、薫と絵美から泊りがけで千葉の海へ遊びに行く誘いを受けた競子は、すでに秒読み段階に入った相馬の逝去前、気持ちの整理と気晴らしを求める心に従って、その誘いを受けるのだが…。

千葉滞在最後の夜…、風が強い海岸で持参した大量の花火に火がつかず悪銭苦戦していた彼女ら7人に、蚊取り線香を手にした若い青年が近づいてきた。

まもなく競子たちが手にする花火には、蚊取り線香からの火が次々と灯され、驚喜した少女7人は花火を手に掴み、カレを取り囲んで踊り出すのだった…。

競子は間違いなく、この時心が安らぎ、目の前の現実から解放されていた!

そして彼女は…、花火に火をともしたカレが、まさかこのあと、自らの心にも火を灯す存在になるとは夢にも思わなかっただろう…。

だが、この夜から約1週間後…!
に立つ横田競子は、あの夜出会った青年、香月明と劇的な再会を果たすことになる。

それは相馬豹一の葬儀に出席したその足で、”ある遣い”を授かり出向いた、マッド・ハウスというライブハウスで…。

その小屋こそ、相和会の幹部で2代目を継ぐ候補の一角であった建田宗政の経営する周辺地上げ対策の拠点にほかならなかった。

かくして、風の強い千葉の海岸でめぐり逢った二人は相和会という共通軸によって、過酷な長いひと夏を共に歩むことになる…。

それは、ふたり…、いや、もう一人、本郷麻衣という強烈な個性を帯同させての数奇かつ過酷な運命の幕開けでもあった…。


***


付録:『ヒート・フルーツ』第1部での登場人物概略⤵

横田競子 ピュアでピカ一の人望を持つ南玉連合ツートップの一角
香月明  やくざが経営するライブハウス専属の訳あり?バンドメンバー
本郷麻衣 ケイコに異様な競争心を抱く南玉連合走り部隊のトップ

剣崎満也 相和会本家付で矢島の片腕。ケイコと麻衣の面倒見役
追川隆由 相和会と相馬豹一を追い続ける反骨の大衆雑誌記者
天理赤子 マッドハウスでアキラにギターを教えた猛女ロッカー

能美薫 ケイコとは中学時代の親友。アキラに好意を抱く…?
横須賀絵美 同上。薫と共にアキラと出会う海へケイコを誘った
青木陽子 千葉の海行きを提案したケイコや薫らの中学時代の友人
横田美咲 ケイコの妹。人望の厚い姉をリスペクトしている
横田美沙 ケイコの母。夫は海外赴任で娘二人と女3人暮らし

高原亜咲 ケイコが姉のように慕う南玉元幹部。神戸へ転居した
南部徹也 超女好きでケイコの元恋人。兄は墨東会OB南部聖一
本田多美代 ケイコの盟友で陸上部仲間。南玉連合各高部隊サブの一人
北田久美 麻衣の側近だがお調子者。レッドドッグス所属の南玉幹部
紅丸有紀 紅組創設者。ケイコが小5の時に出会う。結婚し在米
嵯峨ミキ 有紀から後継指名され紅組新リーダーを経た後、同じく在米
砂垣順二 元墨東会トップで現愚連隊の顔役。バックは星流会
岩本真樹子 麻衣に心酔する反南玉・紅組勢力の元締め役。久美の姉分格


倉橋優輔 撲殺男の異名で恐れられる相和会のソルジャー。麻衣とは意気投合
能勢繁 剣崎組幹部でケイコのガード役。沈着冷静なやくざ
勝田昌実 同上。麻衣のお付き役。激情型の典型的な武闘派やくざ
矢島三郎 武闘派を率いる相和会幹部で建田と3代目を争う
建田宗政 相和会を財政で支える。マッドハウスのオーナーでもあり、矢島とは双璧の幹部
明石田泰造 相馬豹一が唯一杯を交わした弟分。後継争いでは中立を示すが…

北原誠一 剣崎と同格の相和会幹部。兄貴分の建田を後継に推す
間宮康 アキラをコキ使うマッドハウス詰めの末端組員
浅田勝 間宮の同僚だがアキラとは関係が悪くない?建田に心酔
西城アツシ 相和会の末端組員。久美と付き合っているハンパ者
土橋タクヤ アキラとは同じバンドのメンバー。麻衣に抱き込まれる?
泉典子 マッドハウスの隣人。建田の地上げ立退きには最後まで抵抗
喜多 左派運動家。相馬の取材を通じ追川に出会い、典子を紹介する
薗原貴之 マッドハウスでは何かとアキラの側に立つシェーカー
佐田一雄 追川の上司。相和会ネタで上層部から圧力を受ける
中野静人 麻衣に憧れ近づくが、彼女の罠に嵌る高校中退組の一人
イノシシ先輩(通称) 巨体で中退組リーダー。麻衣と格闘するが…
チビ先輩(通称) 中退組でイノシシとは同級。小心者
桑原里美子 滝が丘高陸上部主将。ケイコとは仲の良い部活仲間
志田教諭 滝が丘高陸上部顧問。ケイコを高く評価する担任
松川教諭 同上生活指導。志田と共にケイコの処分阻止に奔走

石田コージ ロック界の大御所。アキラにプロへの途で労を取る

相馬豹一 独立系の雄・故相和会会長。極道界のイカレたカリスマ